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更新日:2021.07.20
執筆:CTC(上海華予信企業信用征信有限公司)
要約:訴訟の時効が過ぎ、品質問題も関わる売掛金の回収をどうすればいいのか?債務者に支払能力がない場合、どうすれば最大限に資金を回収できるか?
キーワード:国有企業、債務過多、訴訟時効消滅、品質問題関連、返済能力がない。
債権者 | 江蘇ABC建築材料機械会社 |
債務者 | 内モンゴルXYZセメント会社 |
債権額 | 707,000人民元 |
売掛金年齢 | 5年 |
状況説明 | 1.債権者は民間企業。同債権は契約金額の10%である品質保証金であり、年齢が5年以上ある。 2.債務者は内モンゴルの国有資本支配の企業で、債務が多く、稼働率が50%しかなく、経営状況も厳しい。現在技術革新を行っているが、資金不足が深刻である。 3.債務の延期期間が長く、訴訟時効が過ぎている。 4.債権者が提供した2つのセメント生産ラインが稼働停止になっており、計量が正確でない品質問題が存在する。 |
債務者状況:内モンゴルXYZセメント会社は内モンゴル大草原の中部に位置し、1996年に工場着工、2000年4月に操業開始した。同社の設立は中国の「八五」重点建設プロジェクトの1つであり、内モンゴル自治区の最大規模の貧困扶助プロジェクトでもある。
案件状況:債務者は債権者から全自動セメント包装機の生産ラインを2つ購入した。契約金額は707万人民元。支払いは1-8-1(契約締結後10%の代金を支払い、設備到着後の取付・設定時点で80%の代金を支払い、1年間の品質保証期間後10%の品質保証金を支払う。)形式で契約に記載した。契約締結後、双方は契約通りに納品して支払い、残りの10%の品質保証金が品質問題で5年以上延期した。
債権者が従業員を回収に行かせる予定だったが、訴訟時効が過ぎたことや、債務者が半休業状態にあること、内モンゴルへの交通が不便であることなど問題点が多かった。回収できる可能性が低く、リスクも高いため、従業員も行きたがらなかった。そこで、第三者の債権回収機構に依頼することにした。
回収担当者は案件を引き受けた後、調査と分析を経て、第一段階の行動計画を作成した。
回収担当者は債務者に面会の約束を取って債務について話し合うために向かった。同社は内モンゴルのウランチャブ市(烏蘭察布)に位置し、工場が市の中心部である集寧区から約100キロの場所にある。列車で一泊一日をかけて上海からウランチャブ市の集寧駅に着き、また集寧駅からタクシーで2時間近くかけて工場に到着した。
同社の事務室の責任者が応接してくれた。その後、責任者が口頭で債務の存在を認めたが、請求書に署名する依頼は断った。一般的に、国有企業は訴訟時効消滅を口実に不支払を主張しない。それは支払遅延という事実が年月が経つにつれて消滅することがなく、支払によって消滅するからだ。しかし、従業員は署名に対して慎重である。署名したら責任があるためだ。特に国有企業の従業員は責任に対する理解が十分にある。
その後、2日間同社に滞在し、事務室の責任者と交流し、同社の基本状況を把握した。責任者が同行して同社の生産状況と債権者から購入した設備の状況を現地で確認した。責任者によると、同社は現在半休業状態であり、従業員の給料も半減しているので、当該債務は資金があるまで支払しにくいそうだ。
債務者との初回の接触から、どのような情報を手に入れたかをまとめてみよう。
上述した債務者と初歩的な接触を通じて、実際に価値がある情報は得られず、既存の情報を確認したのみだ。確認できた状況は債権者の紹介とほとんど一致し、突破口が見つからない。そういう場合、どうすればいいだろう?
実は、このような状況は債権回収では日常茶飯事で、債務者はいつもの口実で断って終わらせようとする。どこから手をつけたらいいのかが分からない場合は、1点に集中して突き詰めて突破口を探したほうが良い。
本件では、債務者が債務を認めていて、お金がある時に支払うと約束した。そこで、同社にいつ、どんな状況でお金が入るかをフォローすることが重要である。同社にさらに話し合い、圧力もかけてから、大体の説明をもらった。同社は現在技術革新を行っており、国の政策金融機関からのローンが9月(3ヶ月ぐらい)に払い込まれるそうだ。
補足調査による背景:同社は国の「八五」重点建設プロジェクトの対象であるが、第一期工事の原価が高すぎて、1.5億元の債務を背負ったあげく、生産ラインの設計にも重大な欠陥があった。さらなる調査とインタビューを通じて、より多くの情報を入手した。同社の管理層は困難にしり込みせず、圧力に耐えて、従業員を率いて懸命に着実に働き、”物質が足りなければ精神で補う”のモットーに第一期工事の設備を改修し、安定した生産と債務の返済を目指している。
債務者を深く調査し、より多くの情報を入手したうえで、債務支払により有利な計画を立てた。
突破口を見つけた後の仕事は何か?9月にローンが払い込まれてから回収に行くか?
債務者がお金がある時に支払うと約束し、9月にローンが払い込まれたら債務を支払うという重要な情報を提供してくれたので、もうほとんど問題ない、9月にお金をもらいに行けばいいと思う人が多いが、これは第一歩にすぎない。第一に、双方が書面の支払合意書や計画に署名したわけではない。第二に、債務者による書面の支払計画をもらっても、履行しない状況が多発する。支払う意思をどのように現実に導いていけばいいだろう?
実は、技術革新のローンが特定用途の特別資金であり、特別な状況でなければ債務返済には使えないのだ。この状況を踏まえて、債務支払の重要性と緊急性を債務者に認識させなければならない。
債務者に対する重要性と影響力をいかに高めるかが急務である。
次の目標は主に2つある。
債務者のところから戻った翌日、我々は債務者が紹介した銀行のローンの状況を確認した。他のルートを通じて、国家政策金融機関内モンゴル支店が債務者の技術革新資金を支給すること、ローンの金額、支給時間、目的、期限などの詳細情報を入手した。三日後、上記情報を債務者の事務室責任者に伝え、積極的な接待と協力に感謝し、回収をフォローするための書類を送付した。
債務者のローンが払い込まれるのは後3ヶ月かかる。その間にしなければならないことは何か?催促を継続し、遅れないように対応するにはどうすればいいのか?
その後の2ヶ月間に、債務者には少なくとも4回連絡を取り、債務者の支払意欲を高め、友情を深め、同社の事業展開進捗も確認した。連絡を取り続けることが重要である。
ローンが払い込まれる1ヶ月前に再度同社に訪問し、払い込まれて債務の支払が終わるまで支払手続きに協力し、流れをフォローしていた。
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