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更新日:2024.05.29
中国では今年も3月に「全人代」が開催されました。全人代ではその年の国家予算決定や国家主席、国務院総理(首相)、最高人民法院院長などの選出が行われるため、国内外から注目される集会となっています。詳しくは以前のコラムでご紹介しておりますのでご覧ください。
今回は2024年3月5日~11日にかけて開催された全人代について決定事項や話題になった出来事をまとめましたのでご紹介します。
通常、全人代の最終日には首相記者会見が行われますが、2024年の全人代では約30年ぶりに首相記者会見が行われませんでした。この異例の事態は海外メディアを筆頭に話題となりました。
国務院(中国の内閣)の機能を強化するため約40年前に制定された「国務院組織法」が改正されました。この改正により、国務院は共産党の指導の下で活動することが明記されました。これは政策の主導権が政府ではなく、中国共産党にある事が法律に明記された事になります。
2024年の政府活動報告では、経済成長率(GDP)目標を5%前後とし、前年を維持しました。2023年度の実質GDP成長率が5.2%だったことから不動産不況など先行きに不透明感広がる中国経済ですが、中国政府は経済の持続的な成長を見込んでいると思われます。
全人代では国防費を含む予算案が承認されました。国防費は前年比7.2%増の1兆6655億元と発表されました。2023年度と同じ割合で、過去数年間にわたる継続的な増加を反映しています。
中国政府は一部重要プロジェクトの資金不足を解決するために、今年から数年連続して超長期特別国債を発行することを決定しました。今年はまず1兆元の発行が予定されています。
中国政府は2024年に向けて、以下の経済社会発展目標と政策方向を設定しました。これらの目標は、持続可能な成長と安定した社会の実現を目指しています。
サービス業の発展と人工知能などの新興技術分野での求人増加により都市部での雇用機会の拡大を目指しています。ただし若年層の失業率が依然として高く、構造的な課題があります。政府は政策支援と新興産業の成長支援により若年層の雇用強化に力を入れています。
インフレーションの管理は消費者の購買力を維持し、生活の質を向上させるために不可欠です。約3%の消費者物価上昇率は、経済の適度なインフレを維持しつつ、過度な物価上昇を防ぐことを目指しています。
政府は所得分配の公平性を高め、貧富の格差を縮小するために累進課税の強化が議論されました。この改革の一環として、高所得者に対する課税強化が提案されました。具体的には、累進課税の制度を見直し、高所得者に対する税率を引き上げるとともに、低所得者や中小企業に対する税負担を軽減することが検討されました。
2023年の穀物生産量は6億9000万トンでしたが、2024年度も前年と同程度の穀物生産量を目標としています。そのための施策として農業技術と機械化の推進や農業インフラの整備が発表されました。
中国は、急速な経済成長に伴いエネルギー消費も増加してきましたが、これが環境への負担となっており、国際問題にもなっております。再生可能エネルギーの導入拡大やエネルギー効率の向上により国内総生産(GDP)当たりのエネルギー消費を約2.5%削減する目標を設定しました。
2024年の全国人民代表大会は、経済成長の推進やアメリカとの建設的な外交政策など、様々な重要課題に取り組む中で開催され、国内外から大きな注目を集めました。中国の2024年の政策は、経済成長、外交、安全保障のバランスを取ることを目指しており、国際的にも高く評価されています。具体的な政策の実施に向けた準備が進められており、特に経済成長目標に関しては、積極的な議論と期待が寄せられています。
執筆者:利墨(上海)商务信息咨询有限公司 高名 宏明
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