第12弾 中国における日系化学工業の市場動向

更新日:2024年11月07日

 

 前回のコラムでは、中国に進出する日系自動車製造業企業を紹介したが、今回は自動車産業の重要な川上産業の1つである化学工業に焦点を当てる。化学工業の川下は、不動産建設、自動車および家電製造、繊維衣料、農業などの多くの分野を含んでいる。

 近年、中国における不動産や自動車などの産業が大きく変化し、その影響が化学工業にも及ぼしている。そのような中、中国に進出している化学工業における日系企業について紹介する。

「プラスチック製品業」の社数が最多

 中国進出日系企業のうち、化学工業企業は合計927社(日系企業全体割合3.3%)である。企業数を細分類業種別に集計したところ、「プラスチック製品業」(社数305社、32.9%)が最も多く、「ゴム製品業」(同134社、14.5%)が続き、そして、「特定化学製品製造」(社数98社、10.6%)は3位となった。(図1)

 細分類を更に詳しく調査すると、  「プラスチック部品およびその他プラスチック製品の製造」(同121社)、「その他ゴム製品の製造」(同64社)、「塗料の製造」(同51社)分野の企業数が上位となっている。

図1 中国日系化学工業の細分類業種分布
※業種は中国産業分類基準(GB/T 4754—2017)に基づく。

企業数最多は「日本ペイントホールディングス」

 日系の化学工業企業に対して、日本親会社と紐づけ、企業数をもとにランキングを作成した。(表1)

 1位の「日本ペイントホールディングス」は中国において13社の化学工業企業を擁し、設立した企業は主に上海市と広東省に分布している。続いて、「住友化学」(10社)は主に遼寧省と江蘇省に、「DIC」(9社)は主に広東省、江蘇省に企業を設立している。

 「日本ペイントホールディングス」は1992年に中国に進出して以来、インフラ・住宅建設ブームとともに塗料事業を拡大してきた。「住友化学」は中国で農薬中間体、ポリプロピレンコンパウンド、半導体用プロセスケミカル、光学機能性フィルムなど複数分野の製造を展開している。「DIC」は1985年に中国に進出し、最も早く進出した化学工業企業として時間をかけて事業基盤を築いてきた。

表1 中国日系化学工業の親会社別企業数ランキング 1位~13位

※日本企業売上高については最新情報を取得し紐づけ。

企業数は1985年以来増加推移

 続いて、中国日系化学工業企業の設立時期について調査をした。(図2)

 1985年から中国に進出して以来、企業数は増加の一途をたどり、特に2000年以降に急激な増加を見せた。しかし、近年では増加傾向を維持しつつも、増加率はやや鈍化している。

2 中国日系化学工業の社数年次推移

「江蘇省」中心に拠点を配置

 中国日系化学工業の地域分布について調査をしたところ、「江蘇省」(社数259社)に最も多くの企業が分布し、以下、「上海市」(同218社)、「広東省」(同144社)と続いて、全体の7割弱を占めている。(表2)

 全体的に見ると、東部沿岸地域に多く分布している。化学工業は、石油や天然ガスなどの原材料の調達を輸入に依存しているため、港湾を利用することが多く、生産拠点が沿岸部にできやすい傾向にある。(図3)

表2 中国日系化学工業 地域別社数ランキング 1位~10位

図3 中国日系化学工業企業の地域分布

まとめ

 今回は、中国に進出する化学工業の日系企業について調査した。2023年、中国の化学工業全体における売上高は9.27兆元と前年比で2.7%減少し、さらに利益は4862.6億元と31.2%の大幅な減少を記録した。低価格帯の基礎製品は供給過剰である一方、高度な技術を必要とする先端化学材料・素材は自給率が約60%と対外依存度が未だに高い状態である。

 特に、半導体用フォトレジスト、CMP研磨パッド材料、超高圧ケーブル材料、高性能メタロセン触媒、高性能リチウム電池用セパレーター材料などの製品は大きく輸入に依存している。このような状況下で、中国に進出している日系化学工業企業は、基礎製品分野において中国本土企業との競争激化で業績の維持が難しくなっている。

今後の成長を遂げるためには、新技術の開発や既存技術の改良を通じて、独自の技術優位性を保持し、環境に配慮した製品の開発や、高機能性材料の提供など他社との差別化がますます重要になってくる。

[実施概要]

・調査名称 :中国における化学工業の市場動向
・調査方法 :中国における日系企業の法人登記情報に基づく
・調査対象データ更新時期 :  2023年3月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業 : 中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びその傘下企業
・調査対象企業数 : 27,968社

※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。

※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2023年3月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。

利墨は、中国において、日中両言語のクラウド型のグループウェアやe-learningシステム、中国企業与信管理サービスを提供し、社内情報共有、社員教育と取引先管理を支援し、日系企業を管理面でサポートしております。

また、2024年6月26日より、お客様のご要望に応え、新サービス「中国日系企業攻めモン」をスタートいたしました。中国日系企業攻めモンは、中国全土に進出した日系企業のデータを抽出できるサービスです。業務内容・資本金・日本親会社などの抽出条件を選択することで、条件に該当する企業を抽出できます。弊社独自の日系企業DBを利用し、他社では入手できない日系企業の正確な情報を提供いたします。

中国での業務拡大をお考えの方は、是非ご利用検討ください。

[参考資料]

表3  中国日系化学工業の親会社別企業数ランキング 14位~33位

資料請求 セミナー一覧