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更新日:2026.02.02
今回は以前、業界分析で取り上げました不動産業について与信管理のポイントや近年の業界動向について触れていきたいと思います。
不動産業における与信管理のポイントとして、以下の点が挙げられます。
中国政府による不動産政策の動向は、斯業種の業績に大きな影響を与えています。2021年1月に発効された「3つの赤い線」と不動産貸付集中管理制度は、不動産企業の資金調達を制限し、斯業界で社債デフォルトや倒産が急増しました。2022年以降は、不動産市場の低迷を受けて、各地方政府は住宅購入に対する制限を緩和し、一時的な住宅購入ブームを促進しました。また、2024年には、政府は、保障性住宅の建設、公共インフラの整備、そして「城中村」(中国の都市開発が進む中で、市街地に取り残された農村地域)の改造の三大プロジェクトを推進する方針を打ち出しており、これらのプロジェクトに参画できる企業は、業績の成長が見込まれています。斯業種との取引に際しては、中国政府による不動産政策の動向に注視する必要があります。また、地域ごとに政策が異なるため、取引先企業の開発プロジェクトが特定の地域に集中していないか、地域特有の政策リスクが存在しないかを確認することも重要です。
不動産業は、不動産開発資金の捻出が業態維持の鍵となり、特に、大規模かつ長期にわたる不動産開発プロジェクトの場合には、金融機関借入など外部資金の調達が必須となります。不動産企業の信用不安により、斯業界の資金調達環境は厳しい状況にあります。2023年における中国不動産開発企業の資金調達額は12兆7,459億元(前年比▲13.6%)、そのうち、国内借入は1兆5,595億元(同▲9.9%)、国外借入は47億元(▲39.1%)となっています。不動産企業における社債デフォルトリスクは、高水準で推移しており、倒産件数も一定の水準を維持すると予想されます。このような状況下で、斯業種との取引に際しては、金融機関との取引状況、株主の資金支援姿勢などを確認し、不動産開発資金の調達能力があるかどうかを確認する必要があります。
2023年における70の都市の住宅価格指数は、ほとんどの都市で各月の前年比・前月比ともに年間を通じて減少傾向で推移しました。この状況は、不動産業界の不景気が続く中で、住宅購入を見送る消費者や融資を控える金融機関が増えていることを反映しています。また、不動産市場では地域や都市によって販売状況に格差が広がっています。斯業種との取引に際しては、保有不動産の地域や販売能力を確認することが重要です。
2023年における国有建設用地の供給は74.9万ヘクタール(前年比▲2.1%)、売却面積は25.5万ヘクタール(同▲17.1%)、売却額は5.1兆元(同▲16.4%)といずれも減少しました。不動産開発企業は販売不振と資金繰り悪化に直面し、新規開発能力が低下した結果、土地取引は大幅に縮小しました。2023年の民営不動産企業による土地取得額は全体の3割弱にとどまり、依然として国有企業が主導的役割を果たしています。
2023年における不動産開発業界の竣工面積は9億9,831万㎡(前年比+17.0%)、施工面積は83億8,364万㎡(同▲7.2%)、新規着工面積は9億5,376万㎡(同▲20.4%)となりました。竣工面積の増加は、既に進行中であったプロジェクトが完了したことを示し、施工面積と新規着工面積の減少は、新たなプロジェクトの立ち上げが停滞していることを示唆しています。特に新規着工面積は20%超の大幅な減少となり、業界全体の先行きに対する懸念が高まっています。
2023年の販売用不動産の販売面積(前年比▲8.5%)と売上高(同▲6.5%)はマイナス成長で推移しています。売上高の内訳では、オフィスビル(同▲12.9%)の減少幅が最も大きく、次いで商業用不動産(同▲9.3%)、住宅(同▲6.0%)の順となっています。他方、2023年末時点で完成済みであるが販売されていない不動産の総面積は6億7,295万㎡(同+19.0%)に上っています。
2023年12月の一線都市における新築住宅の販売価格は前年比▲0.1%となりました。主要都市別では、北京(前年比+1.7%)と上海(同+4.5%)で価格が上昇しました一方、広州(同▲3.0%)と深セン(同▲3.6%)では価格が下落しました。また、二線都市(同+0.1%)は上昇、三線都市(同▲1.8%)は下落を記録しました。中古住宅の販売価格は、一線都市は前年比▲3.5%の下落となりました。北京(同▲2.2%)、上海(同▲3.4%)、広州(同▲5.2%)、深セン(同▲3.1%)すべての都市で販売価格は下落しており、二線都市(▲4.0%)、三線都市(▲4.2%)でも下落しています。新築住宅は都市によっては需要が増加している一方で、中古住宅の需要はすべての都市で下落している傾向がうかがえます。
2023年の不動産開発への投資額は11兆913億元(前年比▲9.6%)であり、その内訳は、住宅(8兆3,820億元、同▲9.3%)、商業用不動産(8,055億元、同▲16.9%)、オフィスビル(4,531億元、同▲9.4%)、となっています。2024年には、不動産企業が国内外において満期を迎える社債の金額は約7,703億元に達する見込みであり、資金回収や新たな資金調達が難しい状況の中、資金繰りの改善は困難な状況が続いています。