第122期　週末出勤はなぜ？中国の“振替出勤”に見る経済効果

更新日:2025.06.24

　中国で働き始めて最初に戸惑ったのが「振替出勤」という独特の制度でした。

　例えば、春節や国慶節などの大型連休前後に、土曜日が出勤日としてカレンダーに表示されているのを見て、日本とは異なる勤務ルールに驚いたのを覚えています。
　今回は、そのような週末出勤を取り入れて連続休暇を生む出すことで、どのような経済効果が生まれているのかに注目してみたいと思います。

１．各国で異なる年間休日数

　中国では、政府が毎年発表する「全国年休日スケジュール」に基づいて休日が設定されており、その中でも特徴的なのが、連続休暇をつくるために週末を出勤日に振り替える制度です。

　一方、日本では基本的にカレンダー通りに休日が決まり、祝日の影響で週末に出勤することはほとんどありません。そのため、中国の振替出勤制度に違和感を覚える日本人が多いのも自然なことと言えるでしょう。

　また、世界各国の公的祝日数を比較した調査では、日本が最も多いという結果になりました。対して中国は、アメリカやEU諸国とほぼ同じ水準となっており、休日の在り方にも国ごとの特徴が表れています。

表１　各国で異なる年間休日数

２．振替出勤を設定する理由

　日本ではあまり見られない振替出勤制度ですが、中国ではなぜわざわざ週末を出勤日にしてまで長期休暇をつくるのでしょうか。

　この理由について、中国の官製メディア「人民日報」は次のように述べています。

・国民の帰省や団らんのニーズに応えるため： 
春節は中国で最も重要な伝統的祝日です。連休を調整し７～８日間の長期休暇を設けることで、遠方で働く出稼ぎ労働者がゆとりを持って帰省できるようにし、同時に交通の混雑緩和にもつながります。

・消費と経済の活性化： 
国慶節や労働節などの「ゴールデンウィーク」に代表される長期休暇を設けることで、消費意欲の潜在力を集中させ、交通、飲食、小売などの業界に波及効果をもたらします。

・休暇の質の向上とスケジュールの最適化： 
祝日と週末を調整しないと、「1日休み＋1日出勤＋再び休み」といった不規則な日程になり、かえって休暇の質が低下する可能性がある。

　祝祭日の休日日程は「国務院弁公庁」 が2001年より「国务院办公厅关于节假日休息安排的通知」という公式文書にて毎年公表しています。

　2001年に公表された「国务院办公厅关于节假日休息安排的通知」では、「休暇期間中、各地域・各部門は当直や安全管理などを適切に手配し、国民が安心して楽しく休日を過ごせるように努めること。いかなる組織や個人も公費を用いた旅行を行ってはならず、クリーンで誠実な政治運営を着実に推進すること。」と定められました。

　 また、2024年11月10日に公表された内容では第七条に、「国民全体の休日は合理的にまとめて統一して休暇を調整し、有給年休制度の実施などと組み合わせて、実際に比較的長い休暇期間を形成する。特殊な場合を除き、法定休日の前後に連続する勤務日は通常6日を超えない。」としています。

３．大型連休がもたらす消費効果と人の流れ

　では、中国の大型連休でもたらす経済効果や人の流れはどのようになっているでしょうか。
　中国での大型連休で期間の長い、春節、国慶節を例に動向を確認します。

表２　春節・国慶節の経済効果

　2022年はゼロコロナ政策の影響で移動や消費が大きく制限され、旅行者数や観光収入は低水準に留まりました。しかし、2023年には規制緩和により需要が一気に回復し、春節・国慶節ともに旅行者数や鉄道利用者数、観光収入が大幅に増加しました。2024年以降はその回復が定着し、安定した成長に移行している。

　これらのデータからも、長期休暇を創出することで「人の流れ＝消費の増加」を経済成長につなげようとしていることが読み取れます。

まとめ

　中国の振替出勤制度は、一見すると不便に感じられるかもしれませんが、帰省や観光の促進、経済効果の最大化など、明確な目的のもとに設計されています。こうした制度の背景にある考え方を知ることで、中国での生活や働き方にも自然と馴染んでいけるのではないでしょうか。

執筆者：利墨（上海）商务信息咨询有限公司　　南　みなみ

【参考資料】
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