平日:9:00~17:30(土日祝除く)
更新日:2016.09.29
中国は世界最大数の国有企業がありますが、「ゾンビ企業」と言われるような赤字垂れ流しの企業があります。また、国有企業からの債権回収にはかなり時間がかかると言われます。今回は、そうした中国の国有企業について解説します。
国有企業の種類は大きく分けて以下3種類があります。
政府100%の出資で設立された企業であり、狭義ではこの分類のみを国有企業と言います。この純国有企業のうち、国有資産監督管理委員会が管理している中央系政府企業は104社(2016年9月時点)あり、石油、航空、電力通信などのインフラ産業が多く占めています。また地方政府が管理している企業も多数あります。
<中国国有資産監督管理委員会管理の中央企業一覧>
※最新の情報は、上記URLの「名录」をご参照ください。
大株主が政府の企業であり、絶対支配企業と相対支配企業の2種類があります。国有絶対支配企業は、政府資本が50%以上を占め、国有相対支配企業は政府資本50%未満ですが、その他の株主に比べ比率が相対的に大きい企業です。
企業数では、中国全国約1,000万社のうち国有企業は全体の0.1%超13万社です。
しかし、中国企業連合会や企業家協会が発表している「2016年中国企業500強(TOP500)」では、中国TOP500の営業収入総額(売上高)は約59.5兆元、うち半分を国有中央企業84 社が占めており、211社の地方国有企業が28%を占めています。民営企業は、残り20%強です。なお、売上高が1兆元を超えている国有企業は、中国石化(シノペック)、中国石油(ペトロチャイナ)、国家電網、工商銀行の4つです。
<2016年中国企業500強> http://www.cec-ceda.org.cn/view_sy.php?id=32006
また、フォーチュン・グローバル世界TOP500の2016年は、中国企業は110社あり(香港台湾の13社含む)、うち80%近くを国有企業が占めています。
このように中国経済の担う大企業のほとんどが国有企業であることが分かります。
上述の「中国企業500強」は、あくまでも規模(売上高)によるランクですが、利益額の面ではどうでしょうか。500社のうち赤字企業が72社もあります。うち中央企業が12社、地方国有企業が55社であり、多くが重厚長大産業の企業です。TOP500の地方企業約26%が赤字ということになります。
また、中国財務部が発表した2015年度の国有企業の利益減少率が前年比6.7%となっており、近年悪化状態になっています。
経営の効率性を示す「総資本利益率(ROA)」に関しては、国家統計局が開示する工業分野での企業平均を見ると、国有企業3.9%、私営企業(一定規模以上)10%となっています。
国有企業が非効率な経営で、低利益(もしくは赤字)であると言えます。
現在、中国では2回目の国有企業改革を実施中であり、1990年後半に実施された1回目の改革では、多くの不採算国有企業の統廃合や民間企業転換、人員削減を行われました。しかし、2008年のリーマン・ショック後に政府による景気刺激策として多くの財政資金が国有企業に投じられ、石油・石炭・鉄鋼等の産業では過剰生産状態となってしまいました。結果、毎年赤字状態にも関わらず、倒産とならずに、政府援助により生き延びている「ゾンビ企業」が近年の課題となっています。
2013年後半に習近平政権では、2回目の国有企業改革がテーマに挙げられ、ゾンビ企業の撤廃を目指しております。具体的には、①混合所有制経済の推進(民間や外資資本を受け入れ)、②現代的な企業制度の整備、外部の経営のプロ登用、③国有資本運営会社の設立(行政による経営への過剰な関与を減らし、「株主」としての機能を期待)などがあります。今後の改革動向に注目しましょう。
以上
※ 参考サイト:greatfire.org
※ 掲載しているブランド名やロゴは各社が所有する商標または登録商標です。
※ この情報の著作権は、執筆者にあります。
※ この情報の全部または一部の引用・転載・転送はご遠慮ください。