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更新日:2015.05.20
今回は中国における「電子決済」についてご紹介したいと思います。
決済と言えば、日本ではクレジットカードが主流で、店舗における少額決済であればSuicaやEdyなどの電子マネーが使われております。一方、中国での主流はクレジッドカードではなく、店舗型のオフライン決済はデビッド式の「銀聯」であり、電子決済は「アリペイ(支付宝)」です。また、中国版LINEと言われる「微信(WeChat)」も2013年から「微信支付(WeChatMoney)」と言われる電子決済サービスを開始し、急速に拡大しています。
私が中国での生活をしてまず感じたのは、スマホを使った電子決済が非常に便利だという点です。アリペイや微信支付は、ECや店舗などの形態に関わらず、高額でも少額でも簡単に利用できます。例えば、「淘宝(タオバオ)」などのECサイトでのオンライン利用はもちろんのこと、グルメ・クーポンアプリ、タクシー配車アプリといったリアル(オフライン)とも連動し簡単に決済可能です。その他、各種公共料金の支払い、映画や高速鉄道のチケット購入、コンビニでの支払も可能です。いわゆるO2O(オンラインToオフライン)が中国では非常に進んでいる印象を受けました。
支払方法も非常にスマート&スムーズで、煩わしさが一切ありません。日本の利用シーンで例えるなら、Suicaが店舗だけでなく、アプリやEC・公共料金でも使えるというスマートさです。
利用時は該当のスマホアプリから金額とパスワードを入力するだけです。もしくは、QRコードを表示させ、各端末からスキャンさせることも可能です。
グルメ・クーポンアプリでの購入例
コンビニでの支払例
支払時には非常に簡単で便利ですが、初回アカウント登録時には実名認証が必要など重要度に応じてセキュリティレベルが異なります。
アリペイのスマホアプリの利用者は2015年5月時点で2.7億人、アリペイ全体の総支払額は3兆8,720億元(約73.6兆円)を超えています。これは、前回のコラムでご紹介した中国のGDP総額の約5%強、消費者向けEC市場の2倍近くです。なお、日本のクレジットカード決済市場は2013年に57.7兆億円、一方Suicaなどの電子マネー決済市場は4.1兆億円です。この数字からも、アリペイが日本のクレジットカードと電子マネーを合せた最強の決済手段であり、EC(オンライン)だけでなく、リアル(オフライン)でもよく使用されていることが分かるかと思います。
以下、中国の電子決済における興味深い利用例を2つご紹介します。
利用例①「スマホで電子お年玉 ~電子版紅包(ホンバオ)~」
中国では毎年旧正月である春節に「紅包(ホンバオ)」と言われるお年玉を渡す文化があります。日本同様、お年玉袋(紅色です)に入れて渡すのですが、子供だけでなく親や周囲のお世話になっている人にも渡します。
今年の春節はスマホから「電子版紅包(電子お年玉)」を送るサービスが爆発的に流行しました。アリペイや微信では、アプリを通じて知り合いに電子版紅包を渡すことができます。個人毎に送るだけでなく、グループ全員にも送れます。グループ送信時には、電子版紅包を送る人数と総額を決めておけば、クジ引きのように受け取る人によって金額が違って来るため、多くの人が夢中になりました。当社でも社員間で電子版紅包を送り、誰が一番高い金額をもらえるか盛り上がりました。
そして、大晦日の2月18日の1日だけでこの電子版紅包の利用総額は、アリペイは40億元(約760億円)、微信も約10億元(約190億円)もあったようです。また、各テレビ番組でも番組放送中に微信にアクセスし携帯電話機器を“シェイク(振る)”ことで、電子版紅包がもらえるという企画を行い、大晦日は多くの人がテレビを見ながらスマホを振っていました。私の知人ではお正月期間の間に合計1,000元相当(1.9万円相当)の紅包を獲得したようです。
利用例②「若者の貯金口座はアリペイ ~余額宝~」
20代の社員達と話していると彼(女)らは銀行にお給料が振り込まれると全額アリペイの「余額宝」に移しています。「余額宝」とはいわゆる個人向けMMF(マネー・マーケット・ファンド)、つまりリスクの低い金融商品になるのですが、15年5月11日時点では余額宝の金利は「約4.3%」です。銀行普通預金の金利は0.35%、定期預金(3年間)で3.50%ですので、アリペイ余額宝の方が断然良いです。なお、日本の銀行の利息0.025%前後ですので、その170倍ほどです。
余額宝への現金の移動も非常に簡単なうえ、最低1元から購入が可能、かつ手数料は無料です。通常のMMFでは売却後に現金化まで数日必要ですが、売却は瞬時に反映されるため、すぐにそのお金を使うことが可能です。是非私もこの余額宝で貯金したいところですが、外国人には簡単に登録できないため、現在調査しているところです。
以上
執筆者: 利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 副総経理 有井次郎
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