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更新日:2015.06.29
中国の6月は、大学生は卒業および就職、高校生は大学入試のシーズンです。そこで、今回は「中国の学生と人材市場」について紹介します。
2016年の日本の新卒大学生の求人倍率は1.73倍(※1)と昨年より更に上昇しており、学生が売り手市場のため、各企業の採用担当者の皆さんは非常にご苦労されていると思われます。一方、中国では大学生は就職難であり、749万人いる大学生のうち100万人近くが卒業時点で就職や進路が決まっていない状況です。
これは、政府の積極的な大学生増加政策により大学生の人数がこの15年で約7倍以上になったものの、ホワイトカラーの求人数が追い付いていないためです。ただし、工場での労働者は人材不足となっており、経済・企業側の需要と大学卒業予定者である供給のミスマッチが発生している状態です。
また、中国の企業では即戦力の採用を希望するため、大学生は事前にインターンシップに参加し、就業の経験をすることが必須になっています。
中国でも近年は金銭的な問題が無ければ誰でも大学入学できる時代になっておりますが、このように卒業後に就職難という状況から、学生やその親たちは良い大学に入学しようと厳しい受験戦争を乗り越える必要があります。
毎年6月7~9日は中国版・大学センター試験「高考(ガオカオ)」が開催され、テレビでのニュースでもその様子が放送されています。たった1回しかないこの大学入学試験のために、これまでの学校教育が行われていると言っても過言ではありません。つまり、「高考」で良い点を取るために良い高校に入り、そのために良い中学校に入る。日本と異なり、中学校の入学時から全員受験が必須となっていため、既に小学1年生から「高考」に向けた受験戦争が始まっています。
中学生や高校生は朝早く、朝7時前後には登校し、16時30分まで授業をします(昼休みは日本よりやや長め)。授業終了後は補習があり、学校に残り1~2時間ほど宿題をし、帰宅後も引き続き学習します。高校2,3年生になるとその補習時間や宿題も更に増加します。OECD(経済協力開発機構)の世界の国・都市の中学生で家庭での学習時間(Homework)の調査では、日本は週平均3.8時間に対し、上海は週平均13.8時間で世界トップでした。(※なお、この調査には学校以外の塾などの学習時間が含まれておりません。中国では学校による学習が中心となっています。)
当然、勉強に関係の無い部活動というものは無く、日本のアニメ(スラムダンクなど)を見て、日本の部活に憧れている若者も多いようです。また、大学に入るまでは恋愛が禁止で、恋愛していることが学校に見つかると親を呼び出され、叱られます。全て「高考」で良い点を取るために学生生活があるのです。
詰め込み教育に対する批判はあるものの、結果としてOECDの学習到達度調査PISAでは、上海が世界学力1位となっており、こうした受験戦争・就職難を勝ち抜いてきた中国人は会社・社会においても非常に賢く、優秀な人材が多いです。
大学生の新卒入社の平均賃金は月3,500元~4,000元程度(7~8万円)、大学院卒で6,000元(12万円)前後です。なお、中国のホワイトカラー全般では一番高い上海で月6,774元(約13.5万円)(※2)、中国における日系企業では、非製造業スタッフで月865ドル(約10万円強)、マネージャーで月1991ドル(約25万円)です(※3)。
円安になり人件費が上昇していると言っても、日本に比較するとまだまだ低コストです。これまでの中国は世界の工場として安くて大量のブルーワーカーの労働力を中心にしておりましたが、多くの優秀なホワイトカラーのビジネスマンが増加しており、私たち日本人駐在員も現地スタッフにペイフォーパフォーマンスで負けていないか日々意識していく必要があります。
また、日本の経営者の皆様は、新卒採用をこれまでの日本国内採用だけでなく、就職難で優秀な人材があふれている中国(人)市場を視野に入れてはいかがでしょうか。実際に当社リスクモンスターグループでは今年度新卒入社した新入社員6名のうち3名が中国人留学生であり、今後の当社グループの未来を担う人材になると期待しています。
以上
※この記事では1ドル125円、1元20円で計算しております。
※ 1:リクルートワークス研究所:大卒求人倍率調査(2016年卒)より。求人倍率は求人数を就職を希望する大学・大学院生の数で割って求めている。
※ 2:智联招聘(中国最大の就活サイト) 2015年春季求職期中国労働力市場白领供求分析より
※ 3:JETRO 在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年編)より
執筆者: 利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 副総経理 有井次郎
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