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更新日:2015.08.29
昨今Uberなどの配車アプリが世界各地で話題になっておりますが、中国ではタクシー配車アプリは日常の中で利用されており、このアプリが使えないとラッシュアワーにはタクシーに乗ることが困難な状態にもなってきております。
上海では人口2,400万人に対して、タクシーの登録者数が5万台程度であり、東京の2倍近くの人口でありながら、タクシー登録台数はほぼ同じです。北京も同様であり、都市部では慢性的にタクシーが不足している状態です。
初乗りは約14元(約280円)とお手頃な価格で、市民の交通手段の1つとして定着しています。
利用時間帯に偏りがあり、通勤ラッシュ時や雨の日などはタクシーを捕まえることが困難な状況です。
タクシー運転手という職業に対して、昔は給料も高く稼げる職業という印象だったようですが、現在はそうではなく、手取り給料も月数千元程度で、教養レベルが高く無い方が比較的多いようです。
中国の配車アプリの累計ユーザー数は1.72億人で、そのうち①「快的打車」、②「嘀嘀打車」の2つで市場シェアはの99.8%を占めています。
※「打車」…タクシーを利用する、という意味です
項目 | ①快的打車 | ②嘀嘀打車 | 集計時期 |
---|---|---|---|
市場シェア | 56.5% | 43.3% | 2014年末時点 |
月間アプリダウンロード数 | 約2.1億回 | 約1.9億回 | 2014年11月時点 |
1人あたり利用回数(3カ月) | 約16回 | 約12.5回 | 2014年7-9月 |
1日平均注文量 | 300万回 | 240万回程度 | 2014年後半キャンペーン終了後 |
1日最大注文量 | 600万回以上 | 530万回 | 2014年前半キャンペーン期間 |
アプリ運転手導入数 | 135万人以上 | 100万人以上 | ①は2014年末時点 ②は2014年3月 |
サービス範囲 | 全国360都市 | 全国300都市 | 2014年末時点 |
出資会社 | アリババ | テンセント |
アプリユーザーはビジネスマンや年配のユーザーもターゲットとしているため、シンプルで分かり易いインターフェースになっています。
アプリで現在地と行き先を送信するだけで、GPS機能を使いタクシーを簡単に呼び出せます。
運転手の評価も分かり、呼出し後、応答運転手が出た時点で、評価を見て確定をすることができます。
日本とは異なり配車にかかる手数料は0円です。現時点では日本のLINE Taxiなどでは400円程度の配車手数料が必要です。
画面イメージ(快的打車の場合)
上記画像の車マークの箇所がアプリを導入し、近隣にいるタクシーです。わずか1駅の間でこれだけのタクシーが呼出し可能で、最近はほとんどのタクシーで導入されております。
①快的打車と②嘀嘀打車それぞれのスマホを用意し、常時2つのアプリを起動し、お客からの予約を待つ運転手も多くいます。
運転手専用アプリが別途有り、利用者からの配車依頼が自動音声でアナウンスされ、運転しながらでも操作しやすくなっています。
運転手にとっても、流しでお客をつかまえるよりアプリ経由で予約してもらったほうが確実に空車率を押さえることできるのがメリットです。
更に利用者からのチップ制度が有り、ラッシュアワーはこのチップを払いタクシーを捕まえることが可能です。さすが商売熱心な中国です。
昨年はこの2大配車アプリがマーケットシェアを獲得しようと大量に資金をつぎ込み、利用者向けキャッシュバックと、運転手向けの推奨金を積極的に行いました。結果的に配車アプリの普及率が高くなったと言えます。
アプリ会社への資金提供は、①快的打車はアリババ出資、②嘀嘀打車はテンセント(中国版LINE微信WebChat運営)出資となり、いわゆるアリババVSテンセント状態でした。
親会社の各決済手段(Alipayや微信マネー)を使うことで、アプリ利用者へキャッシュバックを実施しており、2014年前半は1回あたり10元(200円)程度あったため、ワンメーター内であれば4元(80円)程度で乗車できました。また、タクシー運転手側にも推奨金が1回あたり10元もあったそうです。
過熱競争は5カ月程度で終わりましたが、その間に2社で20-30億元(400-600億円)を費やした、と言われていいます。2014年後半には利用者キャッシュバックや運転手推奨金が徐々に無くなっていき、最終的には、この2大アプリ会社が合併することが2015年2月に決まり、このユーザー獲得戦争が終結しました。
年配の高齢者の方はアプリ使うことが困難なため、タクシーに乗れないと苦情が出たり、道路や電話でタクシーを捕まえることができないことから、交通規制でこのタクシーアプリの利用制限が開始されています。上海では交通局より、朝夕のラッシュアワー2時間は特定の車両(ナンバープレート番号により曜日決定)のみ配車アプリからの注文を受けてはいけない、という規制が出ています。
この半年間でUberのようなハイヤー配車サービスの普及がかなり進んできております。中国語では「専車」と言い、日本でいう白タクにあたるものです。ハイヤーアプリ市場シェアは滴滴专车(上記配車アプリの合併会社運営)が80%、baiduも出資するUberは8%程度です。
ただ、ハイヤー配車サービスはタクシー運転手の商売に直接影響を与えるものであり、タクシー運転手による暴動やストライキなども一部地域で起きています。
また、カーシェアや相乗り乗車などのアプリも広がってきており、今後の動向が注目されています。
以上
※参考データ
2015年2月
易观国际社
執筆者: 利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 副総経理 有井次郎
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