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更新日:2015.10.29
近年日本でのシステム開発は技術者が不足しており、中国などアジア諸国の人材を活用したオフショア・システム開発が普及しつつあります。当社利墨上海(リスクモンスターチャイナ)ではリスクモンスターグループのサービスシステムや社内システムだけではなく、日本のお客様のシステムを中国にて数十名規模で開発しております。そこで、今回は中国のオフショア開発のメリットや注意点について解説します。
メリットとして、主に「コスト削減」「優秀な人材活用」の2点があります。
日本の首都圏でシステム開発を外部委託した場合、平均的な中級SE単価は1人月平均100万円程度です(ただし、会社規模により異なります)。中国の場合は、その1/3~1/2程度の金額です。中国の人件費が高騰しておりますが、それでもまだ日本と比較すると低コストです。また、ベトナムやミャンマーなどの新興国の場合は、更に安く1/4程度になります。中国でも沿岸部(上海、北京、大連など)に、比べ内陸部の方が20~30%低コストです。ブリッジSEと言われる両言語が会話可能なSEが別途必要になるとしても、オフショア開発を推進することで既存システムの開発運用コスト削減につながります。
日本でのIT業界は、「きつい、帰れない、給料が安い」とイメージが悪く、実際に就職希望も少なく、大学の情報系学部も近年は低人気です。一方、中国の場合はどうでしょうか。大学では情報系の学部の人気が高く、理系ではコンピューターサイエンス学部が一番人気であり、ソフトウェア工学部も含むと毎年約15万人の卒業生を排出しております(日本では約1~2万人と言われています)。また、文系であっても多くの大学では、プログラミング開発の基礎演習授業があるようです。
就職希望先としても、金融系や政府・公務員を抜き、IT業界が一番人気です。2015年の新卒学生のうち、約25%がIT業界に就職しています。今年は約750万人の大卒生がおり、そのうち3/4の学生が進学せず就職するとしても、単純計算140万人以上がIT業界に就職したと見ることもできます。日本では、全IT技術者は100万人以下と言われています。
以前のコラム「中国の学生と人材市場」でも紹介した通り、中国の学生は厳しい受験戦争を勝ち抜いてきた優秀な人材が多く、プログラミング言語もC言語やJava、VB等複数の開発言語を使用できる技術者も多いです。また、日本では新卒社員が入社後、プログラミング未経験者に一定期間の研修を行うことで技術者を育成しますが、中国ではプログラミング開発ができることが入社時の前提になっています。
ベトナムやミャンマーなどと比較した場合、コスト面では中国の方が高くデメリットがありますが、「言語が漢字圏」、「オフショア開発経験の歴史が長い」という点では中国にメリットがあります。他国では言語が英語のため、開発設計書などのドキュメントを日本語で作成することは困難です。よって、ユーザーに近い立場での上流工程の開発業務は、中国の方が向いています。また、中国での日本向けオフショア開発は20年以上の歴史があり、日本とのプロジェクトの進め方を熟知している企業やSEが多いです。離職率については、日本と比較するとどこの国も高く、大差ありません。ベトナム、ミャンマーは今は人件費が安いですが、経済成長につれて、現在の中国のようにいずれ高騰してくるでしょう。
オフショア開発を進める上での注意点として、以下3つが挙げられます。
離れた拠点で異なる文化・言語の人たちと仕事をするため、明確で分かり易い説明が必要です。例えば、遠回しの文章を使わない、箇条書きで伝える、結論を最初に書くなど一般的にも重要なことです。この点を注意しないと正しく要件が伝わらない可能性があります。
近くにいる日本人であれば以心伝心である程度考えが伝わりますが、オフショア開発となると詳細な文書で要件を説明していく必要があります。ただし、詳細な文書は、必ず後で役立ちます。詳細な文書を残しておくことで、誰が見えても分かる内容になるため、特定の人しか理解していないという属人化した情報システムになることを防ぎます。
オフショア開発先を単なる下請け先として扱うのではなく、離職率を低下させる仕組みが必要です。例えば、中国人は共に食事をすることに価値を置くため、定期的に出向き、その場を共有することは重要です。また、オフショア開発しているリーダークラスを日本に研修として招き、その研修実施の条件として、短期間での離職時には違約金を個人に請求することにしておけば、ある程度離職率は低下させることが可能です。
以上の注意点を対応するには、一時的に現場の負担感が増加することになります。よって、オフショア開発を成功させるにはトップダウンで進めていく必要があります。
以上
※ 参考データ
智联招聘 :2015年应届毕业生就业调研
執筆者: 利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 副総経理 有井次郎
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