第70期 数字で見るハイテク都市・深圳(深セン)

更新日:2020.12.29

中国のハイテク都市と言えば「深圳」が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。アジア/中国のシリコンバレーと呼ばれ、ドローンやIoT、AIなど最先端技術の製品を多く生み出しております。そんな世界的にも注目されているハイテク都市を知ることで、中国の成長要因の一つがつかめるかもしれません。都市シリーズ第四弾として、今回も数字を用いてご紹介いたしまします。

深圳(shēn zhèn)の基礎情報

深圳市は北京市、上海市、広州市と同じく一級都市で、中国四大都市と称される「北上広深」の一つです。前回までご紹介した北京市や上海市などの直轄市ではなく、広東省に属しています。

香港と隣接する地理的重要性から1979年3月、宝安县を省轄市に昇格されたことで「深圳市」が誕生しました。改革開放路線を採用した鄧小平の指示により1980年に経済特区に指定され、その後急速に発展していきました。

参照:深圳市人民政府-概要

人口:40年で42倍!

深圳の人口は1,343万人(2019年末時点:前年比103%)で、東京都の人口とほぼ同じです。1980年から約40年で42倍となっており、急速に人口増加が加速している地域の一つです。そのうち常住人口(494万人)よりも非常住人口(849万人)が多く、非常住人口は全体の63%を占めている関係から移民都市であることが伺えます。上海の非常住人口(977万人/全体比率40%)と比べても非常住人口の割合が高いです。また、中国で初めて農民がいない地域であることも特徴です。(2021年2月現時点では深圳市のみ)

人口密度が中国本土で一番高く、上海の約2倍の6,484人/㎢で、東京都6,367人(2020年10月)よりも密度が高いです。日本で一番栄えている都市・東京都に、中国国内の中で一番近しい環境であることが伺えます。

参照:2019年上海市国民经济和社会发展统计公报

土地面積:土地価格が急上昇!

深圳は香港と隣接しており「粤港澳大湾区」の中心都市です。「粤港澳大湾区」とは、中華人民共和国国務院によって制定された香港(港)・マカオ(澳)・広東省(粤)の九つ都市を合わせたグレーターベイエリアのことで、世界三大ベイエリア(サンフランシスコ・ベイエリア、ニューヨーク都市圏、東京湾首都圏)に匹敵するエリアを目指しています。

面積は1,997.47㎢で大阪府(1,905.03㎢)と近しいです。深圳市は9つの区で形成されており、以前は沿岸部の羅湖区、福田区、南山区、塩田区の4区が経済特区に指定されておりましたが、2010年7月からは市内全域が対象となっております。

土地価格が北京や上海を抜いて、深圳が最も高く2020年1㎢あたりの平均価格は8万元を超えると言われており、上昇率も高いです。要因として考えられるのは、「急激な人口増加」「他の一級都市と比べて土地が狭い」この2点があげられます。

深圳の経済

深圳の成長速度は急激で「深圳速度(深圳スピード)」と呼ばれています。深圳GDPは香港の1%未満であった1980年2億7000万元から、40年で2019年2兆6,900億元へ1.4万倍に急速に発展しております。どんな発展をしていたのか、要因を中心にご紹介をしていきます。

成長の要因:ポイントは香港と既存産業がないこと

1980年に中国で初めて設定された経済特区とは、当初海外企業向けの税制優遇策で、外資企業の誘致を行った経済政策です。深圳のほかに3都市(珠海、汕頭、厦門)が指定されていましたが、深圳が特に急速発展した理由をご紹介していきます。

一つは香港に隣接している立地の点です。当時から世界的にも金融・貿易センターとして有名な香港が資金を投入し、深圳に工場が建設されました。深圳の土地と労働を使って外資企業が生産する方式の「三来一补」で、多くの外資系加工貿易企業が参入されたことで、人口と規模が急速に発展していきました。

もう一つは既存産業がないことです。もともと農村地域が半数を占める都市であった深圳は産業や大学もなく「既得権益」がないため、全国で才能、技術がある人を深圳に集め続けても弊害が多くありません。そのため、政府からの大胆な政策や外資企業の流入にも、柔軟に対応しやすい環境であったことも重要な要因だと伺えます。

ハイテク産業:思い切った政策転換

加工貿易企業などの技術的内容が少ない労働集約型産業によって発展しておりましたが、世界技術開発について熟知した李子彬氏が1995年深圳市長就任したことにより、ハイテク産業への政策に大きく舵を切ったことも今日まで成長している一つの要因です。

深圳には「ハイテク産業」「金融業」「現代物流業」「文化・創造産業」の四大支柱産業があり、2019年ではGDPの約65%を占め、その中でもハイテク産業の付加価値は9.320億8,500万元でGDPの約34%を占めています。特許申請件数は中国全体30%を占めており、その数17,500件にも及びます。深圳に本社がある企業は、Huawei、テンセント、BYD、ZTE、DJIなど世界的に有名な企業が多く、ハイテク産業だけで約17,000社あり企業数としても多いことがわかります。

【深圳市主要産業】

主要産業・付加価値 2019年度 前年比
工業 9,587億元 4.1%↑
金融業 3,667億元 9.4%↑
卸売・小売業 2,536億元 4%↑
宿泊業、飲食サービス業 4,477億元 7.6%↑
不動産 2,284億元 5.3%↑
交通運輸・郵便業 765億元 3.7%↑

【北京市基礎情報まとめ】

各項目 2019年度 前年比
面積 1,997.47㎢
人口 1,343.88万人 3.16%↑
人口密度 6,484人/㎢
GDP 2兆6,927億元 6.6%↑
第一次産業GDP割合 0.09%
第二次産業GDP割合 38.98% 0.6%↓
第三次産業GDP割合 60.93% 0.6%↑
一人当たりGDP 20万3,489元/人 2.9%↑
一人当たり可処分所得 6万2,522元 8.7%↑
社会消費品小売総額 9,144億元 7.3%↑
輸出額 24,212,399万米ドル 1.6%↓
輸入額 18,935,168万米ドル 9.6%↓

参照:深圳市人民政府のHPより

世界最速の発展を遂げている深圳ですが、私が気になった点は、成功要因の一つが「既得権益がない」という理由と、発展途上の中でハイテク産業への方向転換した点です。国の政策に関わらず、企業や個人においても新しいことをする上で、頭を悩ませるのが「既得権益」だと思います。過去の栄光にしがみついてしまうと、新しい成功にはつながらず、取り残されてしまう可能性すらあるのではないかと感じました。私自身も過去の栄光にしがみつかず、成功している時にこそ、先を見据えて行動することを意識していきたいと思います。

深圳は速報で2020年GDP成長率は3.1%であり、中国全体ではGDP2.3%の伸びであったことから、成長スピードは現在においても他の中国国内都市と比べて高いことは間違いありません。今後の動向もチェックしていきましょう。

※深圳の数値情報は下記参照。

深圳市人民政府

※日本の情報は下記参照。

総務省統計局

東京都総務局

外務省

国土交通省国土地理院

以上

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