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更新日:2023.07.27
中国といえば、PM2.5など大気汚染が深刻化しているというイメージを持つ方もいるのではないでしょうか?しかし、現在の中国では、グリーン・低炭素産業が急速に発展していて、環境分野で世界をリードする立場になっています。今回は、中国においての自然エネルギーの現状や政府・企業の取り組みについて取り上げます。
中国は火力による発電が主流で、2000年時点では総発電容量(発電設備における単位時間当たりの最大発電量)の7割超が火力発電で、自然エネルギーの割合は24.9%しかありませんでした。しかし、近年では自然エネルギーの発電容量が増加し、2020年は41.1%と、2000年と比較すると16.2%増加しました。なお、2020年度の日本での総発電容量に占める自然エネルギーの割合は39%であり、中国よりも2.1%少ないです。
Japan Science and Technology Agency 中国統計年鑑2021年版 をもとに筆者作図
こちらは、2022年度における世界各国での電力消費量に占める自然エネルギーの割合を図表にしたものです。中国での電力消費量に占める自然エネルギーの割合は31%、全世界で13位となっています。
このように、中国の電力消費量に占める自然エネルギーの割合は、世界的にみると多いほうではありません。しかし、発電量については2016年から6年連続で世界1位となっています。また、その増加率もすさまじく、2017年からの5年間で2倍以上も増加しています。
Statistical Review of World Energy 2022をもとに筆者作図
中国国内でのエネルギー構成比をみると、いまだ火力発電が多くを占めているものの、自然エネルギーの発電量は世界で一番多く、その成長率をみると今後ますますの増加が予想されます。
このような中国の自然エネルギー増加の背景には、2015年に採択された「パリ協定」に中国が参加したことがあります。「パリ協定」は気候変動に関する国際的な枠組みであり、2020年度以降の温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めがされました。
中国は、2021年に「二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までにCO2排出量と除去量を差し引きゼロにするカーボンニュートラルを目指す」と表明し、2022年に発表された「第14次5カ年再生可能エネルギー発展計画」では、「自然エネルギーの電力比率を2025年末までに33%前後に引き上げる」という数値目標を宣言しました。
このように、環境に関する取り組みを政府がけん引していることが、中国の自然エネルギーの増加につながっています。
2021年の風車の世界シェアでは、上位15社中の10社(54.0%)が、中国メーカーでした。
出典:Global Wind Development Supply Side Data 2021
2023年7月には、国有企業である中国長江三峡集団という大手電力会社が、世界最大出力となる16メガワットの洋上風力発電用タービンでの発電を開始しました。日本でも中国風力発電機大手の明陽智慧能源集団(明陽智能)の洋上風力発電機が導入され、2023年9月からの運用開始が予定されています。
また、2016~22年の世界のグリーン・低炭素技術発明特許取得件数の累計55万8000件のうち、中国の特許権者の特許取得件数は31.9%を占める17万8000件でした。
このように、中国では再生可能エネルギー発電設備の生産技術も高まっており、国内だけでなく、世界の再生可能エネルギー生産をけん引しています。
かつての中国のイメージとは反対に、エネルギーの脱炭素化が急速に進む姿が、調査から明らかになりました。
しかし、風力発電や太陽光発電といった自然エネルギーは、気象状況によって生産できる電力量の変動が多いため、総発電量に占める自然エネルギーの割合が大きくなることで、電力共有が不安定になることも考えられます。
こういった新たな課題に対応しつつ、どのような発展を遂げていくのか、今後も注目していきたいと思います。
執筆者:利墨(上海)商务信息咨询有限公司 中島 萌
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