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更新日:2021.05.14
今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は不動産業です。不動産業は、土地及び建築物を対象に、開発、建設、経営、管理、保守等の経済活動を行う産業です。不動産業には、ⅰ 不動産開発・管理業、ⅱ 物件管理業が含まれます。
2017年における不動産開発投資総額は10兆9,799億元となり、前年比+7.0%となりました。特に住宅不動産の前年比+9.4%となり拡大している様子が窺えます。
図1
過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均は徐々に上昇しており、近年は30%程度で推移しています。最上位層平均は、やや低下傾向にありますが依然として50%台を維持しています。最下位層平均においては、全体平均同様に上昇傾向にあり、近年は10%程度で推移しています。
自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均10%、下位層平均20%、全体平均30%、上位層平均40%、最上位層平均50%と、概ね均等な分散がみられ、業界内の差が相応に生じている様子が窺えます。
当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均40.5%、全体平均67.0%に対して、上位層平均93.3%、最上位層平均116.8%と上位層における水準が高く、斯業界では、上位層における資金の潤沢度合いが高いことが表れています。
図2
過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は概ね安定的に推移してきたが、近年ではやや長期化の傾向が窺えます。最下位層平均は徐々に長期化し、近年は17か月以上の水準となっています。一方で、最上位層平均は全体平均と同様に安定推移しており、最下位層平均の回転期間に比べ、全体平均と最上位層平均の差は、僅差となっています。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ16日、61日、514日とやや短期化しています。
図3
売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均450日、全体平均61日、上位層平均27日となっており、下位層と上位層とでは、1年程度の回収期間の差が生じていることが表れています。
総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.2回、全体平均0.3回、上位層平均0.4回、最上位層平均0.7回と、全体的に資産効率がやや低い様子が窺えます。
過去10年間における斯業界の売上高総利益率は、2015年に低下が見られ、やや水準は下がったものの、その後はやや回復傾向が見られています。全体平均では、15~20%程度の水準で推移しており、最上位層平均では30%前後での推移となっています。一方、最下位層平均においては、黒字は確保しているものの、一桁台と非常に厳しい採算状態が表れています。
2017年の斯業界における最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ28.2%、16.6%、4.3%と過去10年間においては、回復の兆しが窺えます。
図4
売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均4.3%、全体平均16.6%、最上位平均28.2%と、黒字確保企業が多いながらも、業界内における採算性の良否がはっきりと分かれている様子が窺えます。
総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.1%、全体平均3.0%、上位層平均5.4%となっており、下位層ではほとんど利益が出ていない企業が多く、収益効率が非常に低い様子が表れています。