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更新日:2023.04.19
今回は以前、業界分析で取り上げました機械工業についてビジネスモデルや与信管理のポイント、業界の特徴について触れていきたいと思います。
機械工業は、自動車、重電機械、家電、産業用機械などを製造・販売しており、金属製品製造業、汎用設備製造業、専門設備製造業、自動車製造業、鉄道・船舶・航空宇宙・その他の輸送設備製造業、電気機械・機材製造業の7分野に大別されます。その中でも、市場規模の大きさから、斯の業界の中心となるのは、自動車製造業です。斯の業界は、他の産業との関りが密接であり、特に自動車製造業は、川上の冶金産業、川下の完成車メーカー、エンドユーザーである政府、企業、一般消費者まで幅広い産業リンケージを有しています。
機械工業は、中国政府のマクロ経済政策と民間の投資動向に大きく影響を受けています。2018年以降、中国政府は、斯の業界の川上産業にあたる冶金産業などを中心に環境規制、過剰設備削減政策を実施しています。同政策の結果、冶金産業では、企業淘汰や生産抑制により供給量が減少しており、機械工業にとっては、原材料の需給逼迫に伴う原材料価格上昇にさらされています。また、民間の投資動向については、多くの業種で固定資産投資額が減少傾向にあります。特に、建設、不動産業界の投資の伸び率は鈍化しており、専用設備製造業に含まれる重機メーカーでは、事業環境の厳しさが増しています。斯の業種との取引に際しては、商流を分析し、安定した仕入先を有しているか、原価負担が収益を圧迫していないかなどを確認するほか、取引先の「取引先」の業界動向についても注視する必要があります。
中国政府は、「中国製造2025」、「重大技術装備融資支援力の増大に関する若干の意見」などの方針を打ち出し、斯の業界を中心に製造業の改革を推進しています。同方針は、建国100年の2049年に「世界の製造強国の先頭グループ入り」を目指す長期戦略の骨子となっており、同方針の重点分野を取り扱う企業は資金支援、技術支援を受けることができます。一方で、中国政府は、機械製品の排出抑制基準である「非道路基準」を導入し、斯の業界の環境規制を強化しており、基準未達の企業は、工場稼働停止などの厳しい処分を受けています。斯の業種との取引に際しては、中国政府が重点的に強化したい分野、取扱い品目を有しているか、製造工程の中で中国政府が定める環境基準を遵守できているかなど確認する必要があります。
2019年は、米中貿易摩擦の影響を受け、中国経済は減速傾向にありました。2019年における中国の機械工業の付加価値の増減率は、+5.1%(前年比-1.2ポイント)となり、成長速度が鈍化しています。2019年上期において、1~3月の成長率が+6.3%、4~7月が+3.9%となり、第2四半期以降の成長鈍化が目立ったことから、中国政府は、減税政策などの経済政策を打ち出しました。各種政策が奏功し、2019年下期において、斯の業界の経済活動が活発化したことで、年間の付加価値の増減率が+5.1%に達したものの、前年を下回る結果となりました。また、機械工業、化学工業、繊維工業、電子工業など全工業の平均値である全国工業平均5.7%も下回る結果となりました。
機械工業の川上産業である冶金産業などの生産抑制政策に関連し、斯の業界においても、特定製品の製造量が中国政府によって調整されています。2019年時点で、中国政府が重点的に監視、測定している製品は、約120種あります。2017年12月以降、対象製品の製造量は減少傾向にありましたが、2019年9月以降は、対象製品の約4割について、製造量が増加に転じています。
2019年における機械工業の輸出入額は、7,735億米ドル(前年比-2.1%)となりました。内訳としては、輸出額4,584億米ドル(同+1.2%)、輸入額3,151億米ドル(同-6.5%)であり、輸入額が著しく減少しています。特に、米国との取引に関しては、対米輸出額698億米ドル(同-16.6%)、対米輸入額325億米ドル(同-10.7%)と輸出入額ともに前年を下回る水準となり、対中貿易摩擦が大きく影響し、輸出入の低迷につながっています。
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