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更新日:2024.02.07
今回は以前、業界分析で取り上げました運輸倉庫・郵便業についてビジネスモデルや与信管理のポイント、業界の特徴について触れていきたいと思います。
運輸倉庫・郵便業は、物資を輸送、保管する物流事業を手掛けており、鉄道業、道路運送業、水運業、民間航空業、パイプ運輸業、倉庫業、郵便業の7分野に大別されます。斯業界は、改革開放以前までは国営の鉄道業が業界の中心となっていましたが、近年は中国経済の発展、物流インフラの拡充とともに鉄道以外の輸送機能も発展を遂げています。特に、道路、河川航路の整備や路線距離延伸の中で、道路運送業、水運業は、輸送規模が拡大しています。
運輸倉庫・郵便業の特徴としては、外資系企業の存在が挙げられます。2000年代初頭の外資規制の緩和に伴い、外資系の物流企業が中国市場に参入しています。斯業界が持つ輸送、保管、包装、荷役、流通加工、輸送情報処理などの各機能は、外資系企業の物流ノウハウにより飛躍的に発展しています。
運輸倉庫・郵便業における主な原価は、燃料費、人件費です。特に、中国の人件費水準は上昇傾向にあり、斯業界の収益を圧迫しています。また、斯業界は、競争が激しく、荷主企業に対する価格交渉が困難な企業が多くあります。原価負担が増加した際は、輸送価格に転嫁できず、収益性が悪化する懸念があります。斯業種との取引に際しては、石油の市場価格や賃金水準の変動が、収益を圧迫していないか確認するほか、荷主企業との関係性、取引状況についても確認する必要があります。
運輸倉庫・郵便業のうち、国際輸送業務を主としている企業では、外貨決済が一般化しています。為替変動による損失が発生するリスクがあることから、国際輸送業務を行う企業との取引に際しては、決済通貨の変動状況を確認するほか、為替リスクヘッジの有無ができているかを確認する必要があります。
近年、中国ではeコマース市場が活発化しており、eコマース関連の物流量が増加しています。こうした中で、民間の物流センター運営企業では、ロボット主体の物流センターを設立し、仕分け、配送の効率化を図っています。また、新幹線を活用した配達サービスを展開する企業も出てきており、斯業界に求められる輸送時間は短縮化傾向にあります。斯業種との取引に際しては、輸送設備、システムの状況を確認し、競合他社に比べ優位性を有しているかどうかを確認する必要があります。
2019年における運輸倉庫・郵便業の付加価値は、4兆2,802億元(前年比+7.1%)となりました。第三次産業全体の成長率+6.9%を0.2ポイント上回る水準で伸びています。2018年12月時点における運輸倉庫・郵便業の業界規模は、企業数約4万社(2013年比+126.2%)、従業員は約740万人(同+12.0%)であり、企業数の増加が著しいです。
2019年における貨物輸送量は、471億トンでした。また、港の貨物輸送量は140億トン(前年比+5.7%)であり、そのうち、対外貿易の貨物輸送量が43億トン(同+4.7%)となりました。港のコンテナ取扱量は、2億6,107万箱(同+4.4%)となっており、海上輸送の取扱量が増加していることがうかがえます。一方で、旅客輸送量は176億人(同-1.9%)となり、マイナス成長となりました。
2019年における郵便業の売上高(郵貯銀行など金融部門の売上高を除く)は、郵便業全体が9,643億元(前年比+22%)となり、このうち郵便配達サービス業務が431.6億元(同+17.2%)となりました。また、2019年における郵便配達サービス業務は、248億件(同+4.3%)となっており、売上高、業務量ともに増加傾向で推移しています。
近年、宅配便事業は、eコマース市場の拡大に伴い急速に成長しているものの、2019年に入り、成長速度は鈍化しています。2019年における宅配便業務量は、635億件(前年比+25.3%)となっており、2018年以前の成長率約+50%から半減しています。宅配便業務量の伸びが鈍化する中で、2019年には、全峰、国通、如風達などの多数の宅配便企業が、事業環境の悪化を理由に倒産に至っています。
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