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更新日:2024.02.02
今回は以前、業界分析で取り上げました食品産業についてビジネスモデルや業界の特徴、与信管理のポイントについて触れていきたいと思います。
食品産業は、加工食品を製造しており、農業副食品加工業、食品製造業の2分野に大別されます。斯業界は、かつての「小・弱・散」と呼ばれる小規模産業のイメージから変化し、農林畜水産業の近代化や食料品物流の発展、国民所得上昇に伴う食料品消費支出額の増加の中で大きく発展を遂げています。
2021年における農業副食品加工業の付加価値は前年比+7.7%、食品製造業の付加価値は同+8.0%となりました。食料品別では、一定規模以上の企業における飲料の生産量は1億8,334万トン(同+12.0%)、缶詰食品は832万トン(同+0.1%)、乳製品は3,032万トン(同+9.4%)となっています。
2021年における食品産業の固定資産投資額は減少傾向から回復し、農業副食品加工業は前年比+18.8%、食品製造業は同+10.4%となりました。
2021年における農業副食品加工業の利益総額は前年比-9.2%、食品製造業の利益総額は前年比-0.1%で推移し、業界の総売上高が増えながらも利益は減少しました。その原因の1つとして、原材料の価格上昇が挙げられます。2021年の主要原料の価格は、とうもろこし(前年比+25.5%)、大豆(同+12.8%)、小麦(同+6.6%)、野菜(同+5.6%)、米穀(同+1.9%)といずれも上昇しました。
「2021年度中国食品工業革新発展報告」によると、コロナ禍は人々の生活を変え、人々の食品に対する需要も変化させました。変化として、半調理製品、自己発熱性食品の需要が高まっています。ロックダウンや外出制限の影響で、最初はインスタントラーメンなどの買い占めが多かったですが、その後、保存しやすい自己発熱性食品や事前包装食品、半調理製品などが次々と発売され、2021年における中国の半調理製品の市場規模は3,459億元に達しました。また、健康、免疫力を重要視することから、保健機能食品の需要が高まっています。報告によると、健康維持への投資額が前年比+8~10%となっています。複合栄養素、栄養強化食品、食物繊維の多い食品、善玉菌を含む食品、発酵食品、全粒穀物食品などが注目を集めています。また、コロナ禍は斯業界の企業の販売ルールにも変化をもたらしました。一部農業副食品加工業の大手企業はスーパーマーケットやコンビニエンスストアとの提携を増やす一方、各地で直営店とオンラインショップを開設し、インターネット上での流通経路を構築し、顧客認知度の拡大を図っています。
食品産業は、エンドユーザーである一般消費者の人口動態、所得水準、消費活動の動向に大きな影響を受けます。斯業界との取引に際しては、食料品製造における消費者ニーズの捉え方を確認する必要があります。
食品に関わる産業は、人々の生活に密着していることから景気動向の影響を受けにくいと言われますが、2019年末から拡大した新型コロナ感染では、当該業種や他業界においても業績の悪化が見受けられ、人々の所得も減少がみられました。所得減少によって、高級食材の需要が低下したことで、高級食材に販売基盤を持つ企業を中心に業績の悪化が目立ちました。また、一部の地域においてロックダウンが実施され、生産、販売、物流など正常に生産活動が実施できない企業も見受けられました。特に中小企業が大半を占める斯業界においては、大手企業に比べて資金調達が難しく、業績の急激な悪化に対する耐性が弱いことから、斯業界との取引の際には、販売先の安定性や新型コロナなどの感染症の影響による販売先の業績悪化、資金繰りへの影響などを確認する必要があります。
近年は、中国国民の生活水準向上に伴い、消費者ニーズの高度化、多様化が進んでおり、食料品に対してより高い水準の品質、味が要求されるようになっています。中国国民による食の品質への関心が高まる中で、斯業界の企業は、品質管理にかかる費用負担が増加しています。また、「食品安全戦略を実施し、人民が安心して食べられるように」と、政府は食品安全を強化しており、食品業界における基準、監督・管理、処罰、責任追及制度の充実を行っています。食品安全問題を起こした企業は操業停止、閉鎖に至ることもあるため、斯業界との取引に際しては、食品の安全性や安全管理の徹底について確認する必要があります。
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