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更新日:2025.08.14
今回は以前、業界分析で取り上げました軽工業について与信管理のポイントや業界の特徴について触れていきたいと思います。
軽工業における与信管理のポイントとして、以下の点が挙げられます。
斯業種は、業務規模が大きいほど競争力が高く、優位性を持ちます。主な理由は以下のとおりです。1つ目は、市場競争力や融資能力を相対的に安定的に保つことができ、高い市場占有率を持つため、政府や金融機関からより多くの支援を得ることが可能となります。2つ目は、生産規模を拡大することで、製品やサービスの製造コストを下げ、競争優位性を獲得し、収益とキャッシュフローが安定します。そのため、斯業種との取引に際しては、取引先の規模を確認する必要があります。
酒・飲料・精製茶製造業は、原材料となる大麦やブドウなどの農産物や水などについて、高品質かつ安価な仕入の持続可否が重要となります。特に、酒製造業は、製造費用に占める原材料の割合が高いほか、卸売業者や小売業者に対する価格交渉力が弱いため、原材料の価格変動が収益に及ぼす影響が大きくなります。また、近年は、中国国民の食の品質への関心が高まっていることを背景に、中国政府による飲食料品に対する管理、監督が強化されています。酒・飲料・精製茶の製造にあたって、中国政府が定める安全基準を満たしているかどうかも重要となります。酒・飲料・精製茶製造業との取引に際しては、仕入先・販売先との価格交渉力や製品の品質、政策動向について確認する必要があります。
造紙・紙製品業は、紙パルプ、紙製品などを取り扱っています。近年、造紙・紙製品業の業績は、e-コマースの普及に伴う宅配用段ボールの需要拡大の恩恵を受け、好調に推移しています。一方で、供給量も急拡大しており、同業者間の競争が激化しています。近年では、供給過多による製品市場価値の値崩れが発生し、造紙・紙製品業の卸売業者や小売業者に対する価格交渉力が低下しています。造紙・紙製品業との取引に際しては、仕入先・販売先との価格交渉力について確認する必要があります。
紡績服装・服飾業は、過剰在庫や季節商品、流行遅れの商品が売れ残るリスクがあり、棚卸資産の管理が非常に難しい業種です。斯業種との取引に際しては、在庫管理能力や、流行の変化に対応できる経営能力、市場適応力を確認するとともに、不良在庫が発生していないかを確認する必要があります。さらに、ブランドの知名度が収益の安定性や成長性に影響するため、取引先が展開するブランドの市場価値や競争力を確認することも重要です。
軽工業は、飲食料品や服、家具、文房具などの一般消費財の製造を行う業界です。中国の軽工業は、業種分類として9業種に分かれており、多種多様な製造業が含まれています。なお、飲食料品分野の塩製造業、酒・飲料・精製茶製造業、紡績分野の紡績服装・服飾業は、それぞれ 食品産業、紡績工業ではなく、軽工業として分類されます。
軽工業は、労働集約型の産業であり、製造費用に占める人件費の割合が高くなっています。製造工程に高度な技術を要するケースは比較的少なく、技術集約度が低くなっています。また、原材料や設備投資も重工業と比較して少なく、初期投資が少なくなりやすいことから、新規参入がしやすい業種といえます。近年は、中国経済の発展と中国国民の生活水準向上に伴って、工場や店舗賃貸料、労働者賃金が上昇しており、製造コストが増加傾向にあります。製造コストの増加に伴い、近年は、安価な労働力と原材料を背景に、東南アジア諸国の軽工業の競争力が高まっています。
紡績服装・服飾業は、紡績製品を原料として、製造、加工、デザイン、販売の各段階を経て、各種の衣服やアクセサリーを生産・提供する産業を指します。原材料には綿花、化学繊維、皮革、羊毛などがあり、一般的な紡績製造企業においては綿花のコストが50~70%を占めています。川中には、主に紡績製品や衣服の加工・製造業者が位置し、川下では、天猫(Tmall)、京東(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)、抖音(Douyin)、唯品会(Vipshop)などのECサイトによるオンライン販売チャネルと、デパート、直営専門店、ブランド小売業者、商業施設などの旧来型のオフライン販売チャネルに大きく二分されています。
製紙とは、機械的、化学的、またはその両方を組み合わせた方法で、植物紡績を紙パルプに加工し、紙製品を製造する過程を指します。斯業種は、資源利用効率とリサイクル技術の高度化が重要な特徴です。川上では、主に木材や廃紙を再利用したパルプが製造され、川中の製紙工程にて、生活用紙やコート紙、印刷紙、包装紙など用途に応じた製品が製造されています。川中の過程では、製造効率や品質の安定性が競争力を左右する要素となります。川下では、ティッシュや段ボール、特殊紙などの紙製品の製造がおこなわれ、消費者の多様なニーズや環境意識の高まりに対応するための製品開発と差別化となります。また、業界全体でデジタル化の進展に伴い、紙需要の減少や、環境規制強化への対応が課題となっています。