第57回 中国における与信管理:業界分析 宿泊業・飲食サービス業

更新日:2025.12.08

今回は以前、業界分析で取り上げました宿泊業・飲食サービス業について与信管理のポイントや近年の業界動向について触れていきたいと思います。

1、与信管理のポイント

(1)宿泊業

宿泊業は、宿泊施設の立地条件や設備更新状況が競争力維持の鍵となります。宿泊施設の立地条件は、観光地、駅・空港など、周辺施設の状況や近隣の宿泊施設との競合状況が重要な要素となります。また、設備更新状況については、機能面の維持を目的とした更新投資だけでなく、客室やレストラン等のリフォームなど、集客力向上を意識した投資が必要となります。斯業種との取引時には、宿泊施設の立地条件や設備更新状況を確認するほか、収益性、キャッシュフロー状況を確認し、設備投資費用の捻出可否について確認する必要があります。

近年はインターネットの普及に伴い、オンライン予約経由での宿泊客獲得が主流となっています。宿泊業は、ホームページの整備、オンライン予約サイトへの掲載など、宿泊施設への投資だけでなく、IT面への投資も重要性が高まっています。宿泊業との取引に際しては、ウェブサイトマーケティング状況やオンライン予約サイトへの掲載状況、自前のオンライン予約システムの有無などを確認する必要があります。

宿泊業は資金集約型産業であり、株主の資金力にも注目する必要があります。宿泊施設は、建設時に多額な資金が必要となるほか、資金が回収されるまでの期間が長く、株主には高い資金力が求められます。特に新規設立ホテルの場合、株主の支援が途中で打ち切られることで、プロジェクトが中止になるケースも少なくありません。

(2)飲食サービス業

中国の産業構造が高度化する中で、第三次産業の労働者数は増加傾向にあります。特に、飲食サービス業は、労働集約型産業であり、費用負担に占める人件費割合は高くなっています。近年の労働者賃金上昇や社会保険料徴収の強化政策は、飲食サービス業企業にとって大きな負担となっています。飲食サービス業との取引に際しては、人件費負担による収益圧迫度合いを確認する必要があります。

飲食サービス業の原材料である飲食料品は、鮮度が重要であり、適切な衛生管理が求められます。近年、中国では食の品質への関心が高まっていることから、衛生管理などに関する従業員への教育不足は、対外信用に大きく影響します。飲食サービス業との取引に際しては、衛生管理や従業員への教育状況などを確認する必要があります。

2、近年の業界動向

(1)飲食サービス業は売上高回復も収益性低調

2023年における飲食サ-ビス業の売上高は、5兆元を突破し、過去最高値を記録しました。この成長の背景には、消費促進政策の継続的な強化や、各地で開催された文化・観光、展示会などのイベントがあり、これらが飲食サ-ビス業の急速な回復を後押ししたと推察されます。他方、収益性は15業種の中で最も低い水準であり、2023年には回復の兆しが見られたものの、未だマイナス推移が続く状態となっています。消費者の「消費降級」(消費のグレードダウン)といった消費行動の変化に加え、競争の激化、人件費・不動産賃料・食材コストの上昇が利益率を圧迫しています。

(2)観光市場回復が宿泊業をけん引

宿泊業は、観光市場、ビジネスイベント、会議、展示会、その他の市場の消費者を中心に、観光業界やビジネス活動と密接に関連しています。文化観光省のデ-タによると、2023年の国内観光客総数は、48.9億人(前年比+93.3%)となり、2019年の約8割の水準にまで回復しました。また、国内観光総支出は4.9兆元(同+140.3%)の水準に大幅に増加しました。観光市場の回復に伴い、斯業種における客室単価、客室稼働率ともに成長を見せており、星付きホテルに対する集計データによると、2023年における平均客室料金は370.8元(同+16.4%)、平均稼働率は50.7%(同+32.2%)となっています。

(3)チェーン化加速

近年、飲食サービス業では競争が激化しており、原材料費や人件費の高騰によりコストが上昇しているため、企業は効率的な運営を求め、標準化と統一化を進めています。かかる中において、飲食チェーン企業による標準化、統一化は、経営において大きなメリットを生み出しています。

飲食チェーン店は、サプライチェーンの最適化や情報技術の導入などを通じて調達コストを削減し、品質を均一化することが可能となります。また、迅速な意思決定やスタッフの教育・研修の効率化を実施することで、他社との差別化が難しく、企業間の競争が激化し、数多くの小規模店舗が淘汰される傾向にあります。

2023年における飲食店のチェーン店化率は21.0%(前年比+2.0%)に達し、特にドリンク専門店分野では49.0%に達しています。宿泊業においても同じ傾向が見られ、2023年年末時点のチェーン店展開率は約41.0%(同+2.0%)となっています。なお、ホテルチェーン店の定義は同一ブランドの店舗が3店舗以上存在することとされています。

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