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企業を取り巻くリスクは、企業経営に起因するリスクと外部環境に起因するリスクなどに分けられ、図1のように以下に挙げるような多岐にわたります。
図1:企業を取り巻くリスク
どんな企業も、投資に対するリターンやそのリスクが顕在化した時の影響度を考慮しながら、さまざまなリスクを管理していく必要があります。
為替・金利などの金融市場の変動に関わるリスク、法人税などの税制変動に関わるリスク、規制緩和など法規制変更に関わるリスク、カントリーリスク
消費者の市場動向などのマーケティングに関わるリスク、資金調達などの財務に関わるリスク、ノウハウを持った人材流出・不足やモチベーション低下などの人事に関するリスク
有害物質の流出などの環境汚染に関わるリスク、商品クレームなどの製造物責任に関わるリスク、ハードウェアの故障や情報漏洩などの情報セキュリティに関わるリスク、火災・爆発や労働災害などの事故に関わるリスク
地震・水害・停電などの災害に関わるリスク、テロや経営幹部の誘拐などのリスク、デマ・中傷による評判(レピュテーション)に関わるリスク
与信リスクは、社外である取引先の倒産に関わるリスクであることから、「企業経営を取り巻く環境に伴うリスク」と言えますが、組織体制を構築することでリスクの発生を防止することができるという意味では、「企業経営上のリスク」ととらえることもできます。
与信管理は、「与信リスク」を管理することであり、品質や環境、情報セキュリティなど他のリスクと同様、リスクマネジメントの仕組み(システム)を構築し、運用することが必要不可欠です。
図2:与信管理のPDCAサイクル
マネジメントシステムを継続的かつ有効に機能させるには、図2のようにPlan(計画)⇒Do(運用)⇒Check(見直し)⇒Act(改善)という、「PDCAサイクル」で、常にプロセスを管理し、継続的に改善することが最も確実な方法です。これによって、外部関係者(ステークホルダー)に対しても説明できる体制を作ることができます。
最初のPlanの段階では、与信管理ルールを構築します。まず、リスクの特定として管理すべき与信取引の種類を明らかにし、全社で与信取引を行っている取引先を洗い出します。
次に、与信リスクの算定を行う上で重要な基準となる会社格付制度を導入し、「与信ポートフォリオ分析」を行います。具体的には取引先そして全社的な与信リスクの評価を行い、与信管理目標を達成するための与信管理規程を定め、組織体制、文書を整備することとなります。
Doの段階では、その規程に基づいて具体的なリスク対策を実施します。与信管理の意思決定プロセスを運用し、新規または既存の取引先に対する与信取引の決裁を行います。既存取引先については債権管理や限度管理を行い、回収遅延や与信限度超過の案件を抽出して、理由を調べるようにします。継続して取引を行う先に関しては、取引先の情報収集による動態管理を行い、与信限度の見直しを定期的に行います。さらに、緊急時対応となる問題案件対策や事故対策も必要に応じて実施します。
Checkの段階では、それらのリスク対策が実施されているか、また与信管理ルールが有効に機能しているかをチェックリストに基づいて監査し、見直します。その際、監査結果を踏まえて経営陣によるレビューを行い、与信管理体制の改善指示を仰ぐようにします。そして、最後のActの段階では、Checkの結果から必要に応じて対策や組織体制を見直し、次の目標設定(Plan)につなげていくことになります。