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今回も中国の業界分析を見ていきたいと思います。今回の業界は卸売・小売業です。卸売・小売業には、ⅰ 商材の卸・小売、ⅱ 資材卸・小売、ⅲ 食品の卸・小売等が含まれます。2017年における一般消費財小売の売上高は36兆6,262億元(前年比+10.2%)となりました。そのうち、都市部における一般消費財小売の売上高は31兆4,290億元(同+10.0%)となり、農村部における一般消費財小売の売上高は5兆1,972億元(同+11.8%)となっています。全体的に規模の拡大が見受けられます。
図1
過去10年間における斯業界の自己資本比率について、全体平均はやや上昇傾向で推移し、近年は35%程度での推移となっています。最上位層平均は、多少の上下動を繰り返した後、2013年に急激に低下したものの、翌年には回復し、近年は45%程度での推移を維持しています。最下位層平均においては、上昇基調にあったものの2014年に大幅低下し、近年は10%程度の推移を続けています。
自己資本比率は、数値が高いほど自己資本による資金運用の割合が高く、財務体力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均10%、全体平均35%、最上位層平均45%と下位層よりも上位層の方が、差が小さい様子が表れています。
当座比率は、数値が高いほど、短期的な支払能力が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均62.8%、全体平均77.0%に対して、上位層平均86.7%、最上位層平均128.2%と最上位層における水準が高くなっています。斯業界では、最上位層が突出して資金の潤沢度合いが高いことが窺えます。
図2
過去10年間における斯業界の売掛金回転期間について、全体平均は概ね安定的に推移してきたが、近年では若干長期化の傾向が窺えます。最下位層平均は乱高下を続けながらも、概ね10か月以上の水準を維持しています。一方で、最上位層平均は全体平均と同様に安定推移しており、最下位層平均の回転期間に比べ、全体平均と最上位層平均の差は僅差となっています。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ30日、48日、327日とやや長期化の傾向が窺えます。
図3
売掛金回転期間は、日数が短いほど売掛金を短期間に効率良く回収していると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均327日、下位層平均73日、全体平均48日、上位層平均36日となっており、概ね1~2か月での回収が見込まれるものの、最下位層のみ著しく回収効率が低い状態となっています。
総資産回転率は、数値が高いほど資産を効率良く運用して、売上を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、下位層平均0.3回、全体平均0.6回、上位層平均0.9回、最上位層平均1.9回と、全体平均以下の層において資産効率がやや低い様子が窺えます。
過去10年間における斯業界の売上高総利益率について、全体平均は3%前後での低調な推移が続いています。最上位層平均においては、2010年、2011年と採算の改善が見られましたが、その後は低下し、9%前後での推移となっています。一方で、最下位層平均では、小幅ながら常にマイナス値が続く状態となっています。
2017年の斯業界における当該指標の最上位層平均、全体平均、最下位層平均はそれぞれ9.1%、2.3%、-2.9%と、過去10年間においては最低に近い水準となっています。
図4
売上高総利益率は、数値が高いほど利益の源泉となる付加価値の割合が高いと評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均-2.9%、下位層平均0.9%、全体平均2.3%、上位層平均5.5%、最上位平均9.1%と、業界全体で薄利な傾向が表れています。
総資本利益率は、数値が高いほど総資本を効率良く運用して、利益を獲得できていると評価できます。2017年の斯業界における当該指標は、最下位層平均-6.0%、下位層平均0.6%、全体平均2.9%、上位層平均4.6%となっており、最下位層において赤字企業が多く、収益効率が非常に低い様子が表れています。
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