中国日系企業の特許保有数ランキング(2024年調べ)

更新日:2024年05月28日

新しい技術を開発するためには、膨大な資金や時間、労力が必要であり、特許の保有件数は企業の技術力や開発能力、成長性を示す重要な指標となる。また、企業独自の技術を守り、競争優位性を維持することで、業界への影響力も高まることから、特許保有は企業価値を向上させる効果もある。

今回は、中国日系企業による特許の保有件数を集計し、ランキングを作成することで、どの様な企業の特許保有数が多く、業界への影響力が高いかを調査した。

ランキングを紹介する前に、特許制度について改めて説明する。

日本における特許権は、権利を受けた者が発明を独占的に使用できる財産権の一つであり、特許庁による審査の上で取得する。特許を取得した発明は、権利者が独占的に利用できるだけではなく、第三者に利用を承諾することでライセンス収入を得ることが出来る。

中国でも、日本と同様に特許制度が存在している。表1の通り、中国の特許制度には、『特許法』に基づき、発明、実用新案、外観設計の3種類がある。日本の特許権にあたる「発明」のほか、日本での実用新案権、意匠権にあたる権利についても、「実用新案」、「外観設計」として、特許権の一部となっている。このように、中国の特許制度は、特許種類の区分や、存続期間、申請方法など日本と異なる点も多いが、特許権によって権利が保護されるという点では同様である。

表1 中国における特許の種類

種類発明実用新案外観設計
定義製品、方法またはその改善に対する新しい技術的解決策。
※日本の「特許権」に相当。
製品の形状、構造またはその組み合わせに対する新しい技術的解決策。
※日本の「実用新案権」に相当。
製品の形状、模様、色彩またはその組み合わせに対する美観を有する且つ工業応用可能な設計。
※日本の「意匠権」に相当。
存続期間20年10年15年
手続き受理→初審→発明公開→
実質審査→特許付与
受理→初審→特許付与受理→初審→特許付与

参考サイト:中国国家知的財産局

調査の結果、中国日系企業全体の10%弱にあたる2,761社が有効な特許(「発明公開、実質審査、特許付与」段階にある発明、実用新案、外観設計)を保有していることが分かった。特許を100件以上保有している企業は58社あり、その中でも、上位10社について詳しく紹介する。

表2の通り、中国日系企業の特許保有数ランキングでは、日産自動車が5,376件の特許を保有し、2位と1,103件の差をつけて1位となった。現地法人23社の中でも、特に特許保有数が多いのは「東風汽車有限公司」(特許保有数1,247件)、「鄭州日産汽車有限公司」(同1,215件)、「東風電駆動系統有限公司」(同648件)となっている。2位はパナソニックホールディングスで、4,273件の特許を保有している。特許保有数が多い現地法人は「杭州松下家用電器有限公司」(同761件)、「広東松下環境系統有限公司」(同601件)、「唐山松下産業机器有限公司」(同555件)となっている。3位は本田技研工業で、3,237件の特許を保有している。特許保有数が多い現地法人は「広汽本田汽車有限公司」(同1,690件)、「広汽本田汽車研究開発有限公司」(同511件)、「東風本田汽車有限公司」(同256件)となっている。

上位10社のランキングでは、製造業、特に自動車製造業や電気機械器具製造業のような技術集約型産業の企業がランクインし、企業成長のために技術力や開発力が不可欠であるという、業種特徴が顕著に表れている。

2 中国日系企業の特許保有数ランキング 1位~10

順位日系企業現地法人
特許取得数
業種日系企業売上高(百万円)
1日産自動車株式会社
(中国現地法人26社合計)
5,376自動車製造業3,240,618(23/03期)
2パナソニックホールディングス株式会社
(中国現地法人32社合計)
4,273電気機械器具製造業247,468(23/03期)
3本田技研工業株式会社
(中国現地法人12社合計)
3,237自動車製造業3,586,448(23/03期)
4株式会社日立製作所
(中国現地法人14社合計)
2,863電気機械器具製造業1,631,338(23/03期)
5株式会社フェローテックホールディングス
(中国現地法人28社合計)
1,932専門技術サービス業10,271(23/03期)
6いすゞ自動車株式会社
(中国現地法人4社合計)
1,704自動車製造業1,306,768(23/03期)
7三菱電機株式会社
(中国現地法人8社合計)
1,571昇降設備・自動車部品製造業2,712,165(23/03期)
8トヨタ自動車株式会社
(中国現地法人13社合計)
1,528自動車製造業14,076,956(23/03期)
9東レ株式会社
(中国現地法人11社合計)
1,467化学繊維紡績業618,543(23/03期)
10サーモス株式会社
(中国現地法人2社合計)
852家庭用品製造業25,357(23/03期)

表3の通り、中国日系企業の特許保有数を業種別に集計すると、自動車製造業が15,026件で1位となっている。2位と3位はそれぞれ電気機械器具製造業14,187件、汎用設備製造業11,880件である。

自動車は多くの技術が集積された製品であり、エンジン、電子制御、材料工学といった従来の技術から、安全システム、環境規制対応技術、電動化技術、自動運転技術といった最新の技術まで、多岐にわたる分野で技術革新が行われるため、自動車製造業では多くの特許が出願されている。また、電子デバイスや家電製品が含まれる、電気機械器具製造業は、技術革新のスピードが速く、特に近年は、スマート家電やIoTデバイスの開発が活発であり、次々と新しい製品が開発されるため、特許の出願が頻繁に行われている。汎用設備製造業は、様々な産業で利用される製品を製造しており、各分野での応用技術に関する特許が多い。近年は、産業オートメーションの進展に伴い、工場の自動化やロボット技術、エネルギー管理システムに関連する特許出願も増加している。

表3 中国日系企業の業種別特許数ランキング 1位~10位

順位業種特許件数
1自動車製造業15,026
2電気機械器具製造業14,187
3汎用設備製造業11,880
4専用設備製造業7,328
5ビジネスサービス業5,309
6金属製品業4,782
7研究・試験開発4,264
8ソフトウェア・情報技術サービス業4,103
9卸売業3,676
10化学原料・化学製品製造業3,076

今回の調査では、中国に進出している日系企業が保有する特許数をランキング形式で紹介した。その結果、技術力が高く、知的財産保護に対する意識が高い日系企業が中国でも多く存在していることが明らかになった。

特許の多さは、企業の技術力や成長性を示す重要な指標である一方、特許を維持するには年間費用がかかるため、コストも伴う。そのため、特許をどのように活用し、商品化して利益を上げているかが重要である。特許はただ取得するだけでなく、実際のビジネスで活用して初めて真の価値を発揮ため、企業はこの視点を持って特許戦略を立てることが求められる。また、取引先の技術力、成長性を測る際には、特許件数に注目するだけではなく、その特許の活用状況についても確認することが必要となる。

[実施概要]

・調査名称 : 中国日系企業の特許保有数ランキング
・調査方法 : 中国における日系企業の法人登記情報に基づく
・調査対象データ更新時期 : 2023年3月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業 : 中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びその傘下企業
・調査対象企業数 : 27,968社

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※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。
※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2023年3月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。

[参考資料]

表4  中国日系企業の特許数ランキング 11位~30

順位日系企業現地法人
特許取得数
業種日系企業売上高(百万円)
11川崎重工業株式会社814はん用内燃機関製造業791,099(23/03期)
12ニデック株式会社756電子部品製造業199,470(23/03期)
13株式会社日立ビルシステム680昇降設備製造業256,168(23/03期)
14日本ペイントホールディングス株式会社658塗料製造業29,131(22/12期)
15ファナック株式会社640金属工作機械製造業635,002(23/03期)
16TPR株式会社564はん用機械器具製造業49,437(23/03期)
17ダイキン工業株式会社560冷凍機・温湿調整装置製造業763,994(23/03期)
18JFEスチール株式会社398鉄鋼業2,895,718(23/03期)
19株式会社フジクラ363電線・ケーブル製造業277,680(23/03期)
20森松工業株式会社344金属製品製造業未取得
21テクノエクセル株式会社341はん用機械器具製造業4,290(22/10期)
22株式会社アルバック331真空装置・真空機器製造業94,250(23/06期)
23SMC株式会社305油圧・空圧機器製造業510,431(23/03期)
24株式会社オプトラン288生産用機械器具製造業28,927(22/12期)
25株式会社ハイレックスコーポレーション278自動車部分品・附属品製造業49,082(22/10期)
26株式会社瑞光277パルプ装置・製紙機械製造業14,223(23/02期)
27株式会社荏原製作所261ポンプ・同装置製造業292,333(22/12期)
28富士電機株式会社240変圧器類製造業639,580(23/03期)
29株式会社デンソー230自動車部分品・附属品製造業3,221,034(23/03期)
30サンデン株式会社220自動車部分品・附属品製造業75,107(22/12期)
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