第13弾 中国における日系ITサービス業の市場動向

更新日:2024年11月26日

 

 中国のITサービス市場は、デジタル化や産業の高度化に伴って急速に成長している。特に、AI、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT(モノ同士がインターネットを介してつながる技術)などの分野で技術革新が進んでいる。 今回は、中国に進出するITサービス業における日系企業について調査した。

「ソフトウェア開発」の企業数が最多

 中国進出日系企業のうち、情報輸送・ソフトウェア・情報技術サービス業に分類される企業は合計898社(日系企業全体割合3.2%)である。その企業数を細分類業種別に集計したところ、「ソフトウェア開発」(社数457社、50.9%)が最も多く、コールセンターに代表される「その他情報技術サービス」(同138社、15.4%)が続き、そして、「情報技術コンサルティングサービス」(同65社、7.2%)が3位となった。(図1)斯業界において、5割以上の企業はソフトウェア開発業務に従事していることが分かる。

図1 中国日系ITサービス業の細分類業種分布
※業種は中国産業分類基準(GB/T 4754—2017)に基づく。

企業数最多は「日産自動車」「NTTデータ」「セコム」

 中国日系のITサービス業企業に対して、日本親会社と紐づけ、企業数をもとにランキングを作成した。(表1)

 1位の「日産自動車」は中国において10社のITサービス業企業を擁し、設立した企業は主に広東省に分布している。続いて、同じく1位の「セコム」(社数10社)は主に広東省と浙江省に、「NTTデータ」(同10社)は主に上海市、江蘇省に企業を設立している。
「日産自動車」は合弁会社の「東風汽車」を経由し、自動車メーカー向けのITソリューションや配車アプリなどのIT分野のサービスを提供している。「セコム」は中国で企業向けオンライン・セキュリティシステムの提供などの業務に従事している。「NTTデータ」は、中国国内顧客向けITサービス、クラウド・データセンターサービスと対日オフショア開発事業、BPO事業を展開している。

表1 中国日系ITサービス業の親会社別企業数ランキング 1位~7位

※日本企業売上高については最新情報を取得し紐づけ。
※同率順位の企業は、売上の高い順に掲載。

企業数は1984年以来増加推移

 続いて、中国日系ITサービス業企業の設立時期について調査をした。(図2)
 1984年から中国に進出して以来、企業数は増加の一途をたどり、特に2000年以降に急激な増加を見せた。近年では、2018年以降に増加が加速している様子がうかがえる。

2 中国日系ITサービス業の企業数年次推移

「上海市」中心に拠点を配置

 中国日系ITサービス業の地域分布について調査をしたところ、「上海市」(社数251社、29.8%)に最も多くの企業が分布し、以下、「遼寧省」(同179社、21.3%)、広東省(同78社、9.3%)と続いて、全体の約6割を占めている。(表2)

 ITサービス業において、人材は最も重要な要素と言っても過言ではない。上海は経済が最も発達している地域の1つとして、多くの大学が集まり、全国から優秀な人材が集まることで、ITサービス企業をひきつける都市となった。一方、遼寧省、特に大連市は東北地域の「対外窓口」としての役割を担い、海外企業の誘致に積極的に取り組み、日本からのソフトウェア開発業務のオフショア拠点として成長してきた。(図3)

表2 中国日系ITサービス業の地域別企業数ランキング 1位~10位

図3 中国日系ITサービス業の地域分布

まとめ

 かつて日系ITサービス企業にとって、中国は魅力的な「オフショア開発拠点」であった。人件費が日本に比べて格段に安いことから、受託開発を通じて原価削減を図り、多くの日系企業が中国に開発拠点を設けていた。しかし、ここ数年で状況は大きく変わった。中国の経済成長に伴い人件費は急速に上昇し、かつてのように低コストでの開発が期待できなくなり、オフショア開発の魅力が薄れていた。

 この変化を受け、今後中国で事業を拡大していく日系ITサービス企業は、中国の優秀なIT人材をいかに活用していくかが重要となる。また、中国国内の巨大な市場に目を向け、現地企業や消費者向けにサービスを提供することを視野に入れなければならない。

 一方で、中国のIT産業は猛烈な勢いで成長を続けており、競争力の高い企業が次々と生まれ、新陳代謝が活発となっている。中国市場の成長スピードにどう対応するか、日系ITサービス企業の重要な課題となるだろう。

[実施概要]

・調査名称 :中国に進出したITサービス業の日系企業について 
・調査方法 :中国における日系企業の法人登記情報 
・調査対象データ更新時期 :2023年3月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業 : 中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びそのグループ
企業(株式保有率50%以上の会社及びその会社が支配している会社(50%
以上)をグループ会社とする)の内、情報輸送・ソフトウェア・情報技術サービ
ス業に分類される企業
・調査対象企業数 : 898社

※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。

※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2023年3月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。

利墨は、中国において、日中両言語のクラウド型のグループウェアやe-learningシステム、中国企業与信管理サービスを提供し、社内情報共有、社員教育と取引先管理を支援し、日系企業を管理面でサポートしております。 

また、2024年6月より、お客様のご要望に応え、新サービス「中国日系企業攻めモン」を提供しております。中国日系企業攻めモンは、中国全土に進出した日系企業のデータを抽出できるサービスです。業務内容・資本金・日本親会社などの抽出条件を選択することで、条件に該当する企業を抽出できます。弊社独自の日系企業DBを利用し、他社では入手できない日系企業の正確な情報を提供いたします。 

中国での業務拡大をお考えの方は、是非ご利用検討ください。

[参考資料]

表3  中国日系ITサービス業の親会社別企業数ランキング 10位以降

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