第15弾 中国における日系飲食業の市場動向

更新日:2025年01月23日

 

 中国の多くのショッピングモールや商業施設で目にするのが「日本料理店」である。日本料理は寿司や天ぷら、ラーメンなど、多彩なメニューで中国人の舌を魅了している。2023年、中国における日本料理店は7.8万店舗存在していると言われている。

今回は、中国に進出している飲食業界における日系企業について調査した。なお、個人事業主で登記されている店舗や中国企業が支配する店舗も少なくないので、今回の調査では、主に企業法人として登記されている日系企業に焦点を当てた。

「フルサービスレストラン」の企業数が最多

 中国進出日系企業のうち、「飲食業」に分類される企業は合計752社(日系企業全体割合2.9%)である。その企業数を細分類業種別に集計したところ、軽食やスナックなどを含む「その他飲食業」(社数351社、46.7%)が最も多く、「フルサービスレストラン」(同272社、36.2%)が続き2位、ファストフードサービス(同122社、16.2%)が3位となった。(図1)


 フルサービスレストランとは、特定の場所で昼食や夕食をメインに提供し、店員がテーブルまで注文を取りに行き、料理をテーブルまで店員が運ぶ飲食サービスであり、ファストフードサービスとは、特定の場所や設備を通じて迅速かつ手軽な飲食を提供する飲食サービスである。

図1 中国日系飲食業の細分類業種分布
※業種は中国産業分類基準(GB/T 4754—2017)に基づく。

企業数最多は「ゼンショーホールディングス」

 日系の飲食業に対して、日本親会社と紐づけた企業数をもとにランキングを作成した。(表1)
 1位の「ゼンショーホールディングス」は中国において256社の飲食企業を擁し、設立した企業は主に江蘇省、広東省と上海市に分布している。続いて、「サイゼリヤ」(社数222社)は主に広東省と上海市に、「吉野家ホールディングス」(同51社)は主に湖北省、上海市と山東省に企業を設立している。

 企業数の分布において1-2位(200社以上)、3-4位(50社前後)、5位以降(10社以下)と明確な階層構造があり、1位・2位は圧倒的な規模を誇っている。上位2社だけで業界全体の6割以上の企業数を占め、日系飲食業界におけるトップチェーン店への集中度の高さが注目される。ゼンショーホールディングスは「すき家(食其家)」「はま寿司(滨寿司)」といったブランドを展開し、手頃な価格で高い品質のメニューを提供し、幅広い層の消費者に受け入れられている。サイゼリヤは、中国で「萨莉亚」として親しまれ、低価格でありながら高品質な洋食を提供することで、多くの支持を得ている。

表1 中国日系飲食業の親会社別企業数ランキング 1位~10位

※日本企業売上高については最新情報を取得し紐づけ。グループ全体ではなく親会社単体での売上高を掲載。
※企業数が同数の場合は、同順として掲載。
※同順の企業は、売上高順に掲載。

企業数は1994年以来増加推移

 続いて、中国日系飲食業の年次別企業数について調査をした。(図2)

 1994年から中国に進出して以来、企業数は一貫して増加傾向にあり、特に2015年以降急速に増加してきた。2015年前後、中国の経済が比較的高水準な成長を維持し、人々は収入増加に伴い購買力が高まり、多くの日系飲食企業は巨大なマーケットに期待して進出した。

図2 中国日系飲食業の年次別企業数推移

「上海市」中心に拠点を配置

 中国日系物流業界の地域分布について調査をしたところ、「上海市」(社数381社、37.5%)に最も多くの企業が分布し、以下、「広東省」(同134社、13.2%)、「江蘇省」(同130社、12.8%)と続いて、全体の6割以上を占めている。(表2)
 全体として、日系飲食業者は華東地域の上海市と江蘇省、華南地域の広東省、南西地域の四川省を中心に分布している。(図3)上海市、江蘇省と広東省は経済が発展し、購買力が高い消費者が多く、異国文化への親和性も高く、多くの日系飲食企業にとって最適な市場である。さらに、これらの地域は中国日系企業の分布ランキングでも上位を占めており、日本人駐在員が多く生活している点も注目に値する。駐在員たちは、日系飲食店の安定した顧客基盤として重要な役割を果たしており、現地消費者と合わせて日系飲食業の成長を支える大きな要因となっている。四川省は、多くの観光地を有し、国内外から多くの観光客を引き付け、日本食を含む多国籍料理の市場を拡大させている。

表2 中国日系飲食業の地域別企業数ランキング 1位~10位

図3 中国日系飲食業の地域分布

まとめ

 2023年における中国飲食業界の市場規模(売上高)は5兆2,890億元(前年比+20.4%)で過去最高値を記録した。この成長の波に乗り、日系飲食業も、中国の経済成長や購買力の高まりを背景に、高品質と独自の文化を武器に発展を遂げている。

 一方、近年は中国経済の成長鈍化や消費ダウングレードの傾向が見られ、飲食業界にも影響を及ぼしている。こうした状況下で、日系チェーン店の強みが際立つ。チェーン店は効率的なコスト管理や価格設定が可能で、安定した品質とサービスを提供することで中国の消費者の信頼を得ている。今後は、中国のダイナミックな市場変化に適応する柔軟性が、日系飲食業界の持続的な成長の鍵となるだろう。

[実施概要]

・調査名称 :中国に進出した飲食業の日系企業について 
・調査方法 :中国における日系企業の法人登記情報に基づく
・調査対象データ更新時期:2023年3月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業 : 中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びその傘下企業
・調査対象企業数 :752社

※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。

※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2023年3月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。

利墨は、中国において、日中両言語のクラウド型のグループウェアやe-learningシステム、中国企業与信管理サービスを提供し、社内情報共有、社員教育と取引先管理を支援し、日系企業を管理面でサポートしております。 

また、2024年6月より、お客様のご要望に応え、新サービス「中国日系企業攻めモン」を提供しております。中国日系企業攻めモンは、中国全土に進出した日系企業のデータを抽出できるサービスです。業務内容・資本金・日本親会社などの抽出条件を選択することで、条件に該当する企業を抽出できます。弊社独自の日系企業DBを利用し、他社では入手できない日系企業の正確な情報を提供いたします。 

中国での業務拡大をお考えの方は、是非ご利用検討ください。

【参考資料】表3 中国日系飲食業の親会社別企業数ランキング 11位以降

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