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更新日:2025年05月14日
企業の支店・支社、子会社などを含む関連企業の数は、企業の実力や活動範囲をはかる指標の1つであり、特に広大な中国では地域ごとに市場特性が異なり、事業を拡大するには地域展開が重要になる。
中国に進出した日系企業の関連企業数について、2023年11月に発表した「第2弾_中国に進出した日系企業の関連企業ランキング」で紹介以降、中国市場の経済環境は大きく変化した。不動産業の不振、新エネルギー車(EV)の躍進、そして米国の対中制裁など、日系企業にとって新たな挑戦が必要な局面が続いている。そこで今回、再び最新動向を捉えるべく、日系企業の関連企業数ランキングを2025年3月時点のデータに基づいて再調査した。
調査の結果、日系企業の総社数は26,955社、前回調査(27,968社)より日系企業は減少傾向にある。また、日系企業と紐づけた日本親会社は9,744社、前回調査(10,568社)より関連企業を持たなくなった、つまり実質撤退した日本親会社は全体の7.8%を占める826社ある。関連企業を持つ日本親会社のうち、関連企業数が前回調査より増加したのが805社、減少したのが680社である。全体的には、約8割の日系企業は安定した関連企業規模を維持している一方、14.3%の日系企業は関連企業規模の縮小または撤退を進めているという事実も見逃せない。中国経済の転換期を背景に、維持・増加と縮小・撤退、日系企業間の二極化が進みつつある。
TOP10企業は顔ぶれ変わらず、順位に動きあり
注目のTOP10は、前回調査に比べ、企業の顔ぶれに変動はなかったものの、細かな順位の変動が見られた。表1に示すように、関連企業数首位は、依然としてコンビニエンスストアを展開する「ローソン」(関連企業数636社)がキープしている。続いて、「日産自動車」(同389社)は販売網の強化で拠点新設が進み、順位を1つ上げ2位となった。「すき家」や「はま寿司」など飲食チェーンを展開する「ゼンショー」(同341社)は着実な出店攻勢で同様に順位を上げて3位となった。一方、前回2位だった「ファミリーマート」は「第16弾 中国における日系コンビニエンスストアの市場動向」で紹介した通り、2024年初めに中国事業の再編を実施し、華東エリア以外のコンビニエンスストア事業をパートナーの「頂新グループ」に売却した影響で関連企業数が減少し、順位を2つ落とし4位に後退した。
業種別にみると、コンビニエンスストアや飲食、小売などのサービス業が引き続き上位を占めていることから、日系サービス業が中国消費市場において高い人気を維持していることが分かる。ただし、コンビニエンスストア3社(「ローソン」、「ファミリーマート」、「セブン-イレブン」)は「直営店」から「フランチャイズ」や「エリアライセンス」へのシフト傾向が見られるため、関連企業数は減少傾向にある。飲食チェーンの「ゼンショー」(同341社)、「サイゼリヤ」(同267社)は「手頃な価格で高い品質のメニュー」が高く評価され、新規出店数が閉店数を上回り、全体の関連企業数が増加しつづけている。衣料品ブランドの「ユニクロ」や「GU」「Theory」を展開する「ファーストリテイリング」は、中国において店舗数を目指す「拡張モード」から戦略調整し、既存店舗の効率化に注力し、関連企業数はやや減少も概ね同規模を維持している。エレベーターやエスカレーターを中心にインフラ関連事業を手がける「日立製作所」(同191社)と「三菱電機」(同163社)は堅実に基盤を維持している。一方、乳飲料メーカーの「ヤクルト」は市場シェアの低下などにより関連企業数がやや減少している。
表1 関連企業が多い日系企業ランキング 1~10位
※「日立製作所」は前回「日立ビルシステム」と紐づけて企業も統合したため社数が増えている。
“勢いある”企業はどこ?
2023年11月発表のデータと比較し、関連企業数の増加が著しかった日系企業のランキングを作成した(表2)。1位は中国でペットや育児プラットフォームを展開する「ワンドット」(関連企業+99社)で、各地で多くのペット用品配送拠点を一気に新設している。2位は前述した外食大手の「ゼンショー」(同+71社)で、年間50店舗以上を新設出店を進めている。3位の家具量販店「ニトリ」(同+45社)も年間20店舗以上を新設し、市場での存在感を強めている。
業種別では関連企業数と同様にサービス業企業を中心に企業数が増加している。衣料品の小売において2社がランクインしている。6位はスポーツウェアを手がける「デサント」、スポーツブランド「ルコックスポルティフ」中国販売会社を2022年に子会社化し、中国市場で事業拡大を目指し拠点を新設している。7位の「マッシュスタイルラボ」は、中国で「SNIDEL」や「LILY BROWN」など婦人服のブランドを運営し、店舗新設で拡張を加速している。飲食分野では、2位の「ゼンショー」以外に、「FOOD&LIFE COMPANIES」(スシローなどの運営会社)が9位にランクインし、出店攻勢を強めて現地の外食市場で存在感を増している。
製造業分野では、医療用品メーカーの「クリエートメディック」は、中国市場において消化器系品目の販売が好調であり、販売活動を主要都市から地方都市、主要病院から一般病院へ販売拡大に注力しているため企業数が増加した。「荏原製作所」は中国における事業成長と収益基盤の強化のため、2023年に北京に統括会社を設立し、「荏原冷熱システム」を中心に支社を新設している。
ほかに、化粧品大手の「資生堂」は2024年に中国での企業体制を再構築し、営業チームを本部から独立させ、新会社を設立した影響で関連企業数が増えた。
表2 関連企業増加数が多い日系企業ランキング
まとめ
今回では、中国に進出している日系企業の最新動向を、関連企業数の増減から分析した。全体としては安定した体制を維持する日系企業が多数を占める中、縮小・撤退の傾向が強まっている。一方、内需型サービス業を中心に、特に飲食や衣料関連企業の拡大傾向が顕著である。「ゼンショー」や「ワンドット」など積極展開する企業が目立つ。「ユニクロ」や「資生堂」のように効率化や再編へ舵を切る動きも見られた。変化の兆しが見える中、日系企業ごとに明確な戦略分岐が始まっている。中国は依然として世界最大級のマーケットであり、日系企業はその市場トレンドを注視しつつ、柔軟に戦略修正を図っていく必要がある。
また、企業との取引を検討する際には、企業自身の財務状況や経営状況はもちろん、関連企業の有無と増減も把握し、関連企業において重大な影響を与えるリスクがないかも確認することが重要である。
参考
表3 関連企業が多い日系企業ランキング 11~30位
[実施概要]
・調査名称 :中国に進出した日系企業の関連企業数調査
・調査方法 :中国における日系企業の法人登記情報に基づく
・調査対象データ更新時期:2025年3月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業 :中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びその傘下企業
・調査対象企業数 :26,955社
※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。
※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2025年3月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。
利墨は、中国において、日中両言語のクラウド型のグループウェアやe-learningシステム、中国企業与信管理サービスを提供し、社内情報共有、社員教育と取引先管理を支援し、日系企業を管理面でサポートしております。
また、2024年6月より、お客様のご要望に応え、新サービス「中国日系企業攻めモン」を提供しております。中国日系企業攻めモンは、中国全土に進出した日系企業のデータを抽出できるサービスです。業務内容・資本金・日本親会社などの抽出条件を選択することで、条件に該当する企業を抽出できます。弊社独自の日系企業DBを利用し、他社では入手できない日系企業の正確な情報を提供いたします。
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