中国における日系化学工業の市場動向(2026年調べ)

更新日:2026年02月11日

化学工業は、石油・天然ガスなどを原料として高付加価値素材を生み出す、資本集約型かつ技術集約型の産業である。中国においても、化学工業は製造業全体を支える基盤産業として位置付けられてきた。

一方で近年、中国の化学工業を取り巻く環境は大きく変化している。製品価格の下落、利益率の低下、環境規制の強化、さらには米中摩擦を背景としたサプライチェーン再編など、複合的な構造変化が進行している。

本調査は、2024年11月に発表した「中国における日系化学工業の市場動向(2024年調べ)」(以下「前回調査」)を踏まえ、2025年4月時点の法人登記情報を用いて、中国に進出する日系化学工業企業の分布・構造変化など動向を整理した。なお、前回調査時点では業種情報未取得の企業が一部存在し集計の対象外となったが、今回で新たに取得した業種情報を前回データに紐づけ、また今回と同一統合範囲基準で再集計を実施した。

日系化学工業企業数動向

弊社が独自に収集した、「中国日系企業データベース」に基づく調査によると、中国に進出している日系化学工業企業は984社で、日系企業全体(27,148社)の3.6%を占める。前回調査(1,026社、3.7%)に比べて、社数とシェアともにわずかに減少した。この変化は、中国市場からの急激な撤退を示すものではなく、新規進出の抑制と、既存拠点の選別・再編が進んでいることを示唆している。

細分類業種動向

「化学工業」企業を細分類業種別 に集計すると(図1)、「プラスチック製品業」(社数327社、33.2%)と「ゴム製品業」(同133社、13.5%)が全体の約半数を占め、日系化学工業の基盤分野である状況に変化はない。

一方で特筆すべきは、「塗料、インク、顔料および類似製品製造」の拡大である。企業数は前回調査の88社から100社へと増加し、構成比も8.6%から10.2%へと大きく上昇。これにより、「日用化学製品製造」を上回り、企業数で第4位の細分類業種に浮上した。都市化の進展、環境規制強化、機能性塗料需要の増加を背景に、日系企業の技術優位性が発揮されやすい分野といえる。

図1 中国日系化学工業の細分類業種分布

備考:業種は中国産業分類基準(GB/T 4754—2017)に基づく

日本親会社別動向

日本親会社別の現地法人社数ランキング(表1)では、「日本ペイントホールディングス」が依然として圧倒的に多数で首位となった。中国市場では「立邦」ブランドとして広く認知されており、広東省や上海市など都市化が進む地域に拠点を集中させている。2位には「三菱ケミカルグループ」と「DIC」が並び、いずれも江蘇省や広東省といった主要工業地帯に展開している。前回同様、上位3社のうち2社は塗料メーカーであり、日系塗料企業の中国市場における存在感の強さが際立つ。
一方で、企業数の減少が目立つのが「カネカ」や「住友化学」である。「カネカ」は10社から7社へと減少し、傘下の発泡樹脂製品メーカー「イーピーイ」の拠点解散が影響したとみられる。「住友化学」は4社減らしており、偏光板や合成樹脂事業の売却を進めており、短期集中業績改善策の一環として事業再構築を加速している模様。

表1 中国日系化学工業の親会社別企業数ランキング 1位~16位

地域別動向

中国日系化学工業の地域別分布(図2)については、江蘇省と上海市を中心とする東部沿岸地域に加え、広東省、遼寧省などに拠点が集中している。これらの地域は、石油・天然ガス・塩といった化学工業の基礎原料の産地に近接しているほか、港湾インフラが整備されており、輸入原料の調達にも優れている。こうした地理的・物流的な優位性が、生産拠点の集積を後押ししていると考えられる。

図2 中国日系化学工業の地域分布

上位10地域の構成(表2)も、前回調査に比べ大きな順位変動は見られないものの、江蘇省で18社、上海市で21社の減少が確認されるなど、上位地域においては企業数・シェアともに縮小傾向で推移している。

日系化学工業企業は依然として東部沿岸部に集中しているが、主要地域での企業数は減少傾向にある。これは中国市場全体の成熟化を背景に、拠点数拡大から効率性重視へと戦略軸が移行し、地域の分散と再配置が進めていることがうかがえる。

表2 中国日系化学工業 地域別社数ランキング 1位~10位

新設企業動向

過去10年間の設立推移を見ると(図3)、新設企業は2015年をピークに減少傾向が続いている。特に2022年以降は半減し、2023年にはわずか3社と、過去10年で最低水準にまで落ち込んでいる。2024年にはやや持ち直して6社となったものの、2015年比で約3分の1以下という水準にとどまっている。この動きは、日系企業が中国での化学工業分野への新規投資に対し、慎重姿勢へと転じている様子がうかがえる。

図3 中国日系化学工業 直近10年新設社数推移

まとめ

中国における日系化学工業は、拡大フェーズを終え、選択と集中の段階に入った。こうした構造変化の背景には、中国市場の成長鈍化と競争環境の激化がある。2025年1月~11月の中国におけるゴム・プラスチック製品業の売上高は27,440.3億元(前年比▲0.3%)、営業利益は1,348.7億元(同▲6.1%)。化学原料・製品業では売上高81,765.4億元(同+0.3%)、営業利益3,382.7億元(同▲6.9%)と、売上は微増ながら利益率は低下している。日系化学工業の中国戦略は「量から質」への転換が求められる。単純な拠点数拡大ではなく、高付加価値分野への集中、技術優位性の維持、拠点機能の再定義が今後の競争力を左右する。特に環境対応型素材、機能性化学品といった分野では、依然として日系企業が優位に立てる余地は大きい。中国市場で持続的に事業を展開するためには、「どこで、何を、どの規模で行うか」を見極める戦略的判断がこれまで以上に重要となる。

[実施概要]
・調査名称:中国における日系化学工業の市場動向(2026年調べ)
・調査方法:中国における日系企業の法人登記情報に基づく
・調査対象データ更新時期:2025年4月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業:中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びその傘下企業
・調査対象企業数:27,148社

※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。
※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2025年4月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。

利墨は、中国において、日中両言語のクラウド型のグループウェアやe-learningシステム、中国企業与信管理サービスを提供し、社内情報共有、社員教育と取引先管理を支援し、日系企業を管理面でサポートしております。

また、2024年6月より、お客様のご要望に応え、新サービス「中国日系企業攻めモン」を提供しております。中国日系企業攻めモンは、中国全土に進出した日系企業のデータを抽出できるサービスです。業務内容・資本金・日本親会社などの抽出条件を選択することで、条件に該当する企業を抽出できます。弊社独自の日系企業DBを利用し、他社では入手できない日系企業の正確な情報を提供いたします。

中国での業務拡大をお考えの方は、是非ご利用検討ください。

[参考資料]

表3  中国日系化学工業の親会社別企業数ランキング 17位~38位

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