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更新日:2026年08月06日
企業の支店・支社・子会社などを含む関連企業数は、中国市場への投資姿勢や事業戦略を映し出す重要な指標である。市場環境が大きく変化するなか、関連企業ネットワークの拡大・縮小は、企業規模だけでなく、中国市場に対する戦略転換を示すシグナルとしても注目される。
2025年5月に『中国に進出した日系企業の関連企業数ランキング(2025年調べ) – 利墨上海』を発表して以降、中国市場は不動産市場の低迷、消費回復の二極化、米中対立の長期化など、大きな構造変化を経験した。こうした環境変化を踏まえ、本調査では2026年4月時点の最新データを用いて、中国に進出する日系企業の関連企業ネットワークの変化を分析した。
今回の調査では、中国市場において事業拡大を進める企業と、事業再編や拠点の最適化を進める企業との二極化が、一段と鮮明になっていることが明らかとなった。
今回の調査の結果、中国に進出している日系企業の総社数は26,755社となり、前回調査(26,955社)と比較して200社減少し、日系企業全体としては縮小傾向にある。また、日系企業と紐づく日本の親会社数は9,522社となり、前回調査(9,744社)から222社減少し、実質撤退した日本の親会社は全体の2.3%に相当する。関連企業を保有する親会社のうち、関連企業数が前回調査より増加したのは585社、減少したのは1053社である。言い換えれば、関連企業規模を縮小した企業数は、拡大した企業数の約2倍に達しており、約1割の日系企業が中国での事業を圧縮している。この動向は、中国経済の低迷と内需市場の分化を背景に、日系企業の「二極化」が一層顕著になっていることを示している。一部の企業は逆風の中で拡張を選ぶ一方、より多くの企業は慎重な姿勢になっている。
今回のTOP10ランキングの企業は前回調査と同一だが、順位には変動が見られた。
表1に示すように、関連企業数で首位を維持したのは、コンビニエンスストア事業を展開し、中国市場において出店拡大と既存店舗の入れ替えが同時に進められている「ローソン」(関連企業数613社)で、前回より23社減少している。第2位の日産自動車(同394社)は順位を維持し、関連企業数は5社減少となり、ほぼ横ばいで推移している。
今回最も注目すべき動きは「ファミリーマート」の躍進である。同社は前回の第4位から第3位に順位を上げ、関連企業数を70社も増やした。2024年に中国事業の再編を実施した同社は、再編後に華東地域への経営資源集中を進めている。また、「ゼンショーホールディングス」(同385社)は44社の増加を記録したものの、ファミリーマートの勢いに押されて順位を一つ下げ、第4位となった。飲食業界では「サイゼリヤ」(同293社)が26社の増加で第5位を維持し、堅実な成長を続けている。「セブン&アイ・ホールディングス」(同291社)は56社の大幅増加で第8位から第6位に躍進。コンビニエンスストアとスーパーマーケットの中国市場における店舗ネットワークの拡充が進んでいることがうかがえる。
一方、日立製作所(同233社)は30社の大幅減少を記録し、第6位から第8位に後退した。組織再編や事業統合の影響が数値に色濃く現れている。「イオン」(同243社)と「ファーストリテイリング」(同226社)はいずれも3社の微増で、それぞれ第7位と第9位を維持した。「三菱電機」(同181社)は1社の微減ながら第10位を維持し、関連企業数はほぼ横ばいで推移しており、中国市場における安定した事業基盤を維持している。
業種別にみると、小売業と飲食業が依然として上位を占めている。中国の消費市場は依然として巨大であり、コンビニエンスストア、総合小売、外食チェーンなどの消費関連企業が引き続き積極的な事業展開を行っていることが分かる。また、昇降設備や電気機器などインフラ・製造業分野の企業も安定した事業基盤を維持している。
表1 関連企業が多い日本企業ランキング 1~10位
| 順位 | 変動 | 日本企業 | 中国関連企業社数 | 前回増減 | 業種 | 日本企業売上高(百万円) | ||
| 今回 | 前回 | |||||||
| 1 | 1 | → | 株式会社ローソン | 613 | ▲23 | 小売業 | 411,600 | (25/02期) |
| 2 | 2 | → | 日産自動車株式会社 | 394 | ▲5 | 自動車製造業 | 3,601,971 | (26/03期) |
| 3 | 4 | ↑ | 株式会社ファミリーマート | 389 | +70 | 小売業 | 473,585 | (25/08期) |
| 4 | 3 | ↓ | 株式会社ゼンショーホールディングス | 385 | +44 | 飲食業 | 402,910 | (26/03期) |
| 5 | 5 | → | 株式会社サイゼリヤ | 293 | +26 | 飲食業 | 172,908 | (25/08期) |
| 6 | 8 | ↑ | 株式会社セブン&アイ・ホールディングス | 291 | +56 | 小売業 | 189,014 | (26/02期) |
| 7 | 7 | → | イオン株式会社 | 243 | +3 | 小売業 | 91,079 | (26/02期) |
| 8 | 6 | ↓ | 株式会社日立製作所 | 233 | ▲30 | 昇降設備製造業 | 1,843,173 | (26/03期) |
| 9 | 9 | → | 株式会社ファーストリテイリング | 226 | +3 | 小売業 | 505,053 | (25/08期) |
| 10 | 10 | → | 三菱電機株式会社 | 181 | ▲1 | 昇降設備製造業 | 2,355,541 | (26/03期) |
※中国現地法人の統合範囲を前回調査より拡大して調査している。
前回調査と比較し、関連企業数の増加が大きかった日系企業ランキングを作成した(表2)。第1位は、コンビニエンスストアを展開する「ファミリーマート」(関連企業+70社)となった。第2位は「セブン&アイ・ホールディングス」(同+56社)が続き、第3位の「ゼンショーホールディングス」(同+44社)と第4位の「サイゼリヤ」(同+26社)は、いずれも飲食業からのランクインで、「手頃な価格で高い品質のメニュー」が中国消費者から高く評価され、新規出店数が閉店数を上回り、関連企業数を増やし続けている。
製造業企業のランクインは特に注目に値する。スポーツシューズブランド「アシックス」(同+20社)は、中国スポーツ消費市場の拡大を受け、事業展開を強化している。半導体製造装置メーカー「KOKUSAI ELECTRIC」(同+8社)のランキングは、中国における半導体の国産化推進と密接に関連しており、サプライチェーンにおいて代替が困難な役割を担っていることが、逆風下でも事業を拡大している背景にあると考えられます。
さらに、ファスナー世界最大手「YKK」(同+5社)、自動車部品の「矢崎総業」(同+5社)、工具メーカー「不二越」(同+5社)、計測機器メーカーの「日置電機」(同+5社)など、各分野を代表する製造業企業が並んでランクインした。これらの企業はいずれも産業サプライチェーンを支える専門メーカーであり、ニッチながら高い競争力を維持している。
サービス業では、教育サービスを展開する「株式会社ベネッセコーポレーション」(+16社)がランクインし、中国の親世代に対する幼児教育への高い関心が、日系教育サービスの事業拡大を支えていると考えられる。総合リースサービスの「オリックス」(+10社)は、リースや金融関連サービスに対する需要の多様化が日系企業に新たな機会を生み出していることを反映している。工業ガス大手「日本酸素ホールディングス」(+15社)は、中国製造業の高度化に伴い、事業基盤を強化している。
表2 関連企業増加数が多い日本企業ランキング
| 順位 | 日本企業 | 中国関連企業社数 | 中国関連企業増加数 | 業種 | 日本企業売上高(百万円) | |
| 1 | 株式会社ファミリーマート | 389 | +70 | 小売業 | 473,585 | (25/02期) |
| 2 | 株式会社セブン&アイ・ホールディングス | 291 | +56 | 小売業 | 189,014 | (26/02期) |
| 3 | 株式会社ゼンショーホールディングス | 385 | +44 | 飲食業 | 402,910 | (26/03期) |
| 4 | 株式会社サイゼリヤ | 293 | +26 | 飲食業 | 172,908 | (25/08期) |
| 5 | 株式会社アシックス | 100 | +20 | スポーツ用品製造業 | 47,982 | (25/12期) |
| 6 | 株式会社ベネッセコーポレーション | 50 | +16 | 教育サービス業 | 169,540 | (25/03期) |
| 7 | 日本酸素ホールディングス株式会社 | 85 | +15 | 化学工業 | 63,591 | (26/03期) |
| 8 | オリックス株式会社 | 56 | +10 | 総合リース業 | 715,011 | (26/03期) |
| 9 | 株式会社KOKUSAI ELECTRIC | 15 | +8 | 生産用機械器具製造業 | 168,370 | (26/03期) |
| 10 | 矢崎総業株式会社 | 31 | +5 | 自動車部品製造業 | 850,018 | (25/06期) |
| 10 | 株式会社不二越 | 20 | +5 | はん用機械器具製造業 | 162,838 | (25/11期) |
| 10 | YKK株式会社 | 84 | +5 | ファスナー製造業 | 112,796 | (26/03期) |
| 10 | 日置電機株式会社 | 13 | +5 | 電気機械器具製造業 | 31,283 | (25/12期) |
今回の調査では、中国市場における日系企業の関連企業ネットワークは全体として縮小傾向にある一方で、企業ごとの差が一段と拡大していることが明らかとなった。
小売業や飲食業など中国内需を取り込む企業では、関連企業数を積極的に増やし、店舗網や事業基盤を拡充する動きが続いている。一方で、製造業を中心に事業再編や組織統合を進める企業も多く、中国市場への対応は「拡大」と「最適化」の二極化が鮮明になっている。
関連企業数の変化は、単なる企業規模ではなく、中国市場に対する経営戦略の変化を示す重要な指標でもある。今後は、関連企業数の増減だけでなく、その背景にある組織再編、投資方針、地域戦略などを併せて分析することで、中国市場における日系企業の動向をより的確に把握できると考えられる。
こうした観点から、関連企業ネットワークは、企業の市場浸透度や中国市場に対する戦略を映し出す「経営の温度計」ともいえる重要な指標である。
【参考資料】
表3 関連企業が多い日本企業ランキング 11~30位
| 順位 | 日本企業 | 中国関連企業社数 |
| 11 | パナソニックホールディングス株式会社 | 172 |
| 12 | 株式会社ヤクルト本社 | 160 |
| 13 | トヨタ自動車株式会社 | 141 |
| 14 | 伊藤忠商事株式会社 | 132 |
| 15 | 住友電気工業株式会社 | 127 |
| 16 | 株式会社吉野家ホールディングス | 118 |
| 16 | 豊田通商株式会社 | 115 |
| 18 | ワンドット株式会社 | 104 |
| 19 | 株式会社良品計画 | 103 |
| 20 | 株式会社T&Dホールディングス | 101 |
| 21 | 株式会社アシックス | 100 |
| 22 | 株式会社ニトリホールディングス | 96 |
| 23 | 三井物産株式会社 | 95 |
| 24 | 株式会社東芝 | 93 |
| 25 | 住友商事株式会社 | 90 |
| 26 | 日本酸素ホールディングス株式会社 | 85 |
| 27 | YKK株式会社 | 84 |
| 28 | 株式会社資生堂 | 83 |
| 29 | SMC株式会社 | 82 |
| 30 | ダイキン工業株式会社 | 81 |
[実施概要]
・調査名称 :中国に進出した日系企業の関連企業数調査(2026年調べ)
・調査方法 :中国における日系企業の法人登記情報に基づく
・調査対象データ更新時期:2026年4月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業 :中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びその傘下企業
・調査対象企業数 :26,755社
※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。
※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2026年4月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。
利墨は、中国において、日中両言語のクラウド型のグループウェアやe-learningシステム、中国企業与信管理サービスを提供し、社内情報共有、社員教育と取引先管理を支援し、日系企業を管理面でサポートしております。
また、2024年6月より、お客様のご要望に応え、新サービス「中国日系企業攻めモン」を提供しております。中国日系企業攻めモンは、中国全土に進出した日系企業のデータを抽出できるサービスです。業務内容・資本金・日本親会社などの抽出条件を選択することで、条件に該当する企業を抽出できます。弊社独自の日系企業DBを利用し、他社では入手できない日系企業の正確な情報を提供いたします。
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