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更新日:2025.01.21
今回は以前、業界分析で取り上げました医薬品製造業について与信管理のポイントや業界の特徴について触れていきたいと思います。
医薬品製造業における与信管理のポイントとして、分野ごとに以下の点が挙げられます。
原薬の製造過程において、環境汚染を引き起こす溶媒が大量に生成されます。従来は、産業振興の観点から、製造過程で生じる一定の環境汚染は黙認されてきましたが、近年、中国政府による環境規制が強化されていることから、環境保全策を講じない原薬メーカーは、一般的に工場の稼働停止や閉鎖処分が下されます。原薬メーカーとの取引に際しては、環境保全策の実施状況や環境保全コストによる収益への影響などを確認する必要があります。
環境汚染の規制強化の影響で、原薬の製造量が制限された結果、原薬供給量が減少し、原薬の価格が高騰しています。製剤メーカーでは、原材料である原薬の価格高騰が収益を圧迫するケースが見受けられます。また、医薬品は、政府が運営する入札制度を通じて医療機関へ販売されており、販売価格が上昇しにくいため、製剤メーカーは、原価上昇と売価下落による収益の悪化が懸念されます。製剤メーカーとの取引に際しては、収益性について確認する必要があります。
また、「集中購買政策」の推進により、ジェネリック医薬品製造企業の収益性が大幅に低下しており、新薬研究開発能力が企業の収益力を大きく影響すると考えられます。斯業界の企業との取引に際しては、特許の有無、研究開発費用の投入度合い、人材確保などの面を確認する必要があります。
漢方薬は、化学薬品よりも歴史は長いものの、産業としては製造過程や品質基準、安全性評価において劣っており、医薬品市場全体に占める割合は小さいです。漢方薬においても、化学薬品と同様に、原価上昇による収益低下が生じています。また、中国政府による医療保険政策によって、病院収入における「薬占比(医薬品販売収入割合)」が引き下げられたことで、中国国内における漢方薬の需要は低迷しています。漢方薬メーカーとの取引に際しては、収益性の確保や販路の安定性などを確認する必要があります。
バイオ医薬品は、開発サイクルが長期である他、審査許可を取得する手続きが煩雑という特徴があります。販売薬品の開発・販売において1つの薬品に特化している場合、審査許可が下りずに新薬品開発の中止や、新製品の開発までに時間を要することから、1つの薬品に業績が左右されます。
そのため、バイオ医薬品メーカーとの取引の際には、扱っている製品が単一製品か、複数製品かを把握する必要があります。また、単一製品の場合には、開発サイクルが長期であることから、円滑に開発を進めるべく、国際基準を満たした臨床試験施設の有無や研究開発資金の有無などを確認する必要があります。