中国に進出した日系企業の従業員数ランキング(2025年調べ)

更新日:2025年12月22日

 従業員数は、企業の規模を測る最も直感的な指標の一つであり、企業の市場対応力や戦略転換を映す鏡でもある。中国に進出した日系企業の従業員数について、2023年12月に発表した「中国日系企業の従業員数ランキング」(以下「前回調査」)で紹介以降、再び最新動向を捉えるべく、2025年9月時点のデータに基づいて再調査した。なお、ここで用いる従業員数は、各社が開示した最新の工商年報に記載された社会保険加入者数を基準としている。

TOP10企業の顔ぶれは概ね安定

 まず、中国日系企業の親会社別に従業員数を集計した(表1)。トップ10に名を連ねる企業は、前回調査とほぼ同じ顔ぶれで、大きな変動は見られなかった。業種別では、今回も製造業が中心であり、とりわけ自動車関連と電機メーカーが上位を占めている。

 首位は「日産自動車」(現地従業員数76,956名)で、前回調査から約6,500人減員したものの、依然としてトップの座を守っている。続く「パナソニックホールディングス」(同58,170名)はほぼ横ばい、3位の「トヨタ自動車」(同49,371名)は微増と、上位陣では「日産自動車」が減員となったが、順位に変動はなかった。

 「本田技研工業」は減員しながらも4位を維持している。5位から~7位は「日立製作所」「住友電気工業」「ダイキン工業」、それぞれ従業員数を3,000人以上の増員してもがありながら、前回と同順位をキープしている。

 一方で、小さな順位変動も見られた。「ニデック」は従業員数に大きな変化はないが、順位を一つ上げて8位になった。逆に「村田製作所」は減員により順位を1つ落として9位となった。「デンソー」は微減ながらトップ10入りした。一方、前回10位だった「矢崎総業」が7,000人以上と大幅減員によりトップ10から外れた。

表1 中国日系企業の従業員数ランキング 1~10位

備考:現地従業員数の統合範囲を前回調査より拡大して調査している。
※1 前回順位・現地従業員数を今回と同一統合範囲基準で再集計した結果である。

従業員増加数ランキング

 今回と前回調査で従業員数を取得できた現地法人を対象に比較を行い、従業員増加数ランキングを作成した(表2)。業種別では製造業が中心で、飲食業からも1社がランクインしている。

 1位は「住友電気工業」の現地法人「天門武住電装」。従業員数は502人から3,061人へと急増(+2,559人)した。その背景には新工場への移転がある。

 2位と5位には「マキタ」の現地法人「牧田(中国)」の支社2社がランクインしている。合計で2,500人超の増員となった。ただし同社は減少ランキングにも登場しており、組織再編・人員移動の影響が推測される。グループ全体では減少傾向にある。

 3位は「エポック社」の現地法人「平成玩具(吉安)」、玩具市場の拡大と現地生産強化により1,163人増となった。

 4位は「ゼンショーホールディングス」の現地法人「泉盛三餐飲管理(北京)」、飲食業として唯一のランクインである。北京での事業拡大により1,130人の雇用を創出した。

 6位と10位は「NOK」の蘇州と珠海子会社が入り、生産拠点の集約や急速にEV車が普及する中国で車載向けフレキシブルプリント基板(FPC)の需要増に対応している。

 その他、「アイシン」は唐山工場でBMW向けEV駆動部品生産が寄与、「常石造船」は中国でメタノール燃料船の建造を進め、脱炭素関連において生産拡大、「トヨタ自動車」の子会社「プライムプラネットエナジー&ソリューションズ」が大連でEV電池の増産投資など、いずれも新エネルギー・環境対応。EV関連の成長が背景にある。

表2 中国日系現地法人の従業員増加数ランキング 1~10位

従業員減少数ランキング

 同様に従業員減少数ランキングも作成した(表3)。業種別では自動車と電機、電子部品メーカーが中心に並んだ。

 最大な減少幅を記録したのは、「本田技研工業」の現地法人「広汽本田汽車」、3,112人減で従業員数は9,446人となった。ガソリン車中心のラインアップが中国市場の急速なEVシフトに対応できず、スマート化のペースも遅れ、販売不振が続いている。

 2位は「マキタ」の現地法人「牧田(中国)」で2,861人減となった。米中関係の不安定化や関税施策の先行き不透明などで中国からルーマニアとタイの工場に移転したことが要因のようだ。

 「村田製作所」は3位の「無錫村田電子」(電子部品事業)と7位の「村田新能源(無錫)」(新エネルギー用リチウム電池事業)の2拠点で計4,000人超の大幅減員があった。中国でのスマートフォンの需要低迷が響いた。

 4位は「キヤノン」の事務機器工場である「佳能(中山)弁公設備」、人員削減のみならず、25年11月末で生産停止と閉鎖の発表もあった。「市場環境の急変」「レーザービームプリンタ(LBP)市場の縮小」「中国系ブランドの急成長」が背景にある。

 5位は「トヨタ自動車」の「一汽豊田汽車」で1,738人減だが、同社の「新エネルギー支社」では1500人以上の増員が見られ、組織再編の様子がうかがえる。

 6位は「ニデック」の東莞精密モーター工場で1,482人減員となっており、受注減によるリストラが進んでいる。

 その他、「シャープ」の無錫工場が1,326人減、「京セラ」の事務機器工場が1,283人減、「矢崎総業」の煙台工場が1,224人減とそれぞれ市場環境の変化や需要減退が影響している。

 

表3 中国日系現地法人の従業員減少数ランキング 1~10位

まとめ

 今回では、中国に進出している日系企業の最新動向を、企業従業員数の変動から分析した。中国で大量の従業員を雇っている自動車製造業、電機製造業、電子部品製造業などでは、中国経済や産業構造の転換に伴い、市場競争の激化による効率化や再編を進めつつ、需要拡大分野では積極的な投資と増員を行っている。EVや新エネルギー分野への投資が進む企業は増員傾向にあり、逆に、ガソリン車やスマートフォン関連など、需要が減少する分野では人員削減や工場閉鎖が相次ぎ、日系企業が中国市場で「守り」と「攻め」を同時に展開している。また、地政学的リスクやコスト高、サプライチェーン再設計といった外部要因も、生産拠点の海外移転や組織再編を後押ししている。一方、飲食業など非製造業の存在感も増し、多様化の兆しも見えてきた。今後、日系企業が中国市場で持続的な競争力を維持するには、柔軟な戦略転換と成長分野への積極投資が鍵となるだろう。

[実施概要]
・調査名称 : 中国日系企業の従業員数ランキング(2025年調べ)
・調査方法 : 中国における日系企業の法人登記情報に基づく
・調査対象データ更新時期 : 2025年4月時点で開示されていた法人登記情報と2025年9月時点の工商年報情報
・調査対象企業 : 中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びその傘下企業
・調査対象企業数 : 27,148社

※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。
調査に利用している中国法人登記情報は、2025年4月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。

 利墨は、中国において、日中両言語のクラウド型のグループウェア、e-learning、与信管理サービスを提供し、社内情報共有、社員教育と取引先管理など日系企業をの管理業務を支援しております。

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【参考資料】

表4 中国日系企業の従業員数ランキング 11~30位

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