中国における日系企業の休廃業動向(2026年調べ)

更新日:2026年06月09日

中国国家外貨管理局が2026年3月27日に公表した「2025年国際収支報告」によると、2025年の外資企業による直接投資(FDI)は800億米ドルとなり、4年ぶりに増加した。一方で、ピークであった2021年(3,441億米ドル)と比較すると約76.8%減となっており、依然として低水準が続いている。マクロ環境の不透明化、不動産不況による景気停滞、現地企業との競争激化などが重なり、外資企業の投資意欲は萎縮傾向が続いている。

本調査では、2025年3月に発表した「中国における日系企業の休廃業動向(2025年調べ)」(以下「前回調査」)を踏まえ、2025年4月時点で把握した中国日系企業(23,553社)のうち、2026年2月時点で休廃業に至った企業を集計した。休廃業の判断基準は前回調査同様で、企業登記情報の企業形態(登記抹消、休業・廃業)及び年次報告書の企業状態(休業・廃業・清算)に基づく。

休廃業企業数は月平均で増加

調査の結果、休廃業に至った日系企業は1,628社であり、日系企業全体の6.9%を占めていることが明らかになった。今回調査は2025年4月~2026年2月(11か月間)であり、月平均件数で換算すると約140社となり、前回調査結果の約90社を大きく上回る水準となった。

TOP5業種は変わらず、自動車製造業がTOP10入り

休廃業に至った日系企業を業種別に集計すると(表1)、「卸売業」(休廃業企業数387社)が最も多く、2位が「小売業」(同378社)、3位が「ビジネスサービス業」(同163社)となり、いずれも前回と同様に上位を占めている。

一方で、「自動車製造業」(同30社)は前回より順位を上げて8位となった。背景としては、2025年6月に発表した「中国日系企業の業種分布ランキング(2025年調べ)」が示すように、中国自動車市場ではEV化が急速に進んでおり、現地メーカーとの競争激化やEVシフトへの対応の遅れにより、中国市場で日系自動車の競争力が衰えていることが影響した可能性がある。また、「繊維・衣料品業」(同38社)は2ランクアップして6位となった。

逆に、「ソフトウェア・情報技術サービス業」(同35社)と「専門技術サービス業」(同28社)はそれぞれ7位、9位に後退した。デジタル経済の拡大を背景に、クラウドサービスやITアウトソーシングなど一部の分野では需要が比較的堅調であり、休廃業の動きは相対的に限定的と考えられる。

上位10業種のうち、「小売業」(休廃業率15.7%)、「繊維・衣料品業」(同10.7%)における休廃業率の高さが目立つ。これらの業種は参入障壁が低く、国内ブランドとの競争に晒されやすいため、淘汰が進みやすい傾向がある。

表1 業種別中国日系休廃業企業数ランキング

順位変動業種休廃業企業数(社)業種企業数(社)休廃業率(%)
今回前回
11卸売業3876,2326.2%
22小売業3782,41415.7%
33ビジネスサービス業1632,7965.8%
44飲食業698518.1%
55科学技術普及・応用サービス業538166.5%
69繊維・衣料品業3835510.7%
76ソフトウェア・情報技術サービス業358334.2%
813自動車製造業307124.2%
98専門技術サービス業284326.5%
910専用設備製造業286134.6%

※休廃業率=休廃業企業数/業界企業数

日本親会社別はコンビニが上位維持、ランキングに大きな変動

休廃業に至った日系企業に対して、日本親会社と紐づけた企業数ランキング(表2)では、「ローソン」が157社と最も多く、2位は「セブン-イレブン」(休廃業企業数41社)で、コンビニチェーンを中心とする小売企業が引き続き上位を占めている。続いて、「マッシュスタイルラボ」(同34社)は3位へ大きく浮上したほか、「ニトリホールディングス」(同32社)、「デサント」(同28社)、「ポーラ」(同20社)も順位を大きく伸ばした。一方、「ゼンショーホールディングス」(同27社)、「ヤクルト本社」(同17社)、「日産自動車」(同16社)はそれぞれ6位、9位、10位に後退した。

上位10社のうち、小売業(同5社)では、チェーン型の多店舗展開や代理販売型のビジネスモデルが一般的であり、店舗閉鎖や法人統合に伴う休廃業が発生しやすい傾向がみられる。

ローソンでは、中国市場において出店拡大と既存店舗の入れ替えが同時に進められている。同社は関連企業数で日系企業トップを維持しており(中国に進出した日系企業の関連企業数ランキング(2025年調べ))、休廃業数の多さも、関連企業数が反映した結果とみられる。ニトリについては、中国における大型店舗の採算悪化を背景に、出店モデルの見直しや不採算店舗の整理を進める方針が示されており、店舗閉鎖に伴う法人整理が休廃業数の増加につながっていると考えられる。

表2 親会社別中国日系休廃業企業数ランキング

順位変動日本企業休廃業企業数(社)業種日本企業売上高(百万円)
今回前回
11株式会社ローソン157小売業411,600(25/02期)
22株式会社セブン-イレブン・ジャパン41小売業879,460(25/02期)
344株式会社マッシュスタイルラボ34小売業85,000(25/08期)
4161株式会社ニトリホールディングス32小売業28,184(26/03期)
526株式会社デサント28卸売業14,886(25/03期)
64株式会社ゼンショーホールディングス27飲食業402,910(26/03期)
78株式会社イオンファンタジー26娯楽業75,516(26/02期)
827株式会社ポーラ20小売業90,373(25/12期)
97株式会社ヤクルト本社17食料品製造業163,717(26/03期)
109日産自動車株式会社16自動車製造業3,601,971(26/03期)

TOP10地域の顔ぶれは概ね変わらず、上位は東部沿岸に集中

休廃業日系企業の地域別ランキングでは(表3)、「上海市」(休廃業企業数434社)が最も多く、次いで「広東省」(同211社)、「江蘇省」(同175社)が続く。遼寧省は3ランク上昇して4位となり、山東省と順位が入れ替わった。北京市も浙江省を上回り5位に浮上した。また、湖北省は10位にランクインした。遼寧省および北京市は日系コンビニの重点展開地域であり、店舗数および関連企業数が多いことから、企業の新設・退出の変動幅も相対的に大きくなりやすい。

上位10地域は、地域別の日系企業進出数(中国日系企業の地域分布ランキング(2025年調べ))と概ね一致している。休廃業企業数は進出企業数の多い中国東部沿岸地域に集中しており、この分布傾向は前回調査とほぼ変わらない。また、休廃業率では地域差がみられ、四川省の休廃業率(10.9%)が特に高い。

表3 地域別中国日系休廃業企業数ランキング

順位変動地域休廃業企業数(社)地域企業数(社)休廃業率(%)
今回前回
11上海市4346,9066.3%
22広東省2113,3646.3%
33江蘇省1753,2835.3%
47遼寧省1521,6869.0%
56北京市1261,4638.6%
65浙江省1081,2168.9%
74山東省1021,3767.4%
88四川省6761310.9%
99天津市669477.0%
1011湖北省305425.5%

資本金別の上位構成は変わらず、小規模企業で休廃業率が高止まり

資本金が登録されている休廃業企業749社(※1)の分布をみると、100万元~500万元(215社)が最も多く、次に1千万元~5千万元(171社)、500万元~1千万元(99社)と、前回と同じ順位を維持している。(表4)

資本金規模が小さい企業ほど休廃業率が高い傾向も前回調査と大きく変わらない。特に「0~50万元」(休廃業率10.2%)、「50万元~100万元」(同9.9%)など、小規模企業で休廃業率が相対的に高く、小規模企業ほど市場変動やコスト上昇の影響を受けやすいことが示唆される。

※1 支店・支社の場合は登録資本金がありません。

表4 資本金別中国日系休廃業企業数ランキング

中国日系企業
登録資本金(RMB)
休廃業企業数(社)中国日系企業数(社)休廃業率(%)
0-50万元4544110.2%
50万元-100万元919239.9%
100万元-500万元2153,8355.6%
500万元-1千万元991,7105.8%
1千万元-5千万元1713,6094.7%
5千万元-1億元591,1605.1%
1億元以上692,1043.3%

従業員数が多い休廃業企業

休廃業になる直前に提出した年度報告に、社会保険加入人数(現地従業員数)の記載がある休廃業に至った日系企業1,498社に対して、日本親会社と紐づけた従業員数をもとにランキングを作成した。(表5)

1位は「住友電装」(休廃業企業数1社、従業員数5,267名)、2位は「アツギ」(同2社、1,208名)、3位は「日産自動車」(同15社、958名)である。「住友電装」はワイヤーハーネスなどの自動車部品の生産拠点としていた京山の拠点を閉鎖した。「アツギ」は、吸収合併による工場再編を実施し、生産機能を新工場に集約し、運営体制を再構築したとみられる。「日産自動車」は中国市場での販売低迷やEV化競争の激化を背景に、グローバルな人員削減や生産体制見直しを含む構造改革に伴い、既存法人の整理が行われている模様である。

表5 親会社別中国日系休廃業企業従業員数ランキング

順位日本企業従業員数休廃業企業数(社)業種日本企業売上高(百万円)
1住友電装株式会社5,2671金属製品製造業971,500(25/03期)
2アツギ株式会社1,2082繊維工業13,169(26/03期)
3日産自動車株式会社95815自動車製造業3,601,971(26/03期)
4株式会社日立製作所5976電気機械器具製造業1,843,173(26/03期)
5株式会社ヤクルト本社29417食料品製造業163,717(26/03期)
6マックスバリュ東海株式会社2606小売業382,963(26/02期)
7株式会社ニトリホールディングス17332小売業28,184(26/03期)
8三菱鉛筆株式会社1601その他製造業50,791(25/12期)
9ローム株式会社1354集積回路製造業416,625(26/03期)
10イオンディライト株式会社13211その他事業サービス業284,407(26/02期)

休廃業企業のブラックリスト入り状況

ブラックリストとは、中国の各級人民法院が義務を履行しない債務者を掲載する「信用失墜被執行人リスト」を指します。休廃業に至った日系企業のうち、ブラックリストに登録されている企業は13社で、休廃業企業全体の0.8%に相当する。この比率は前年同様で、日系企業全体におけるブラックリスト登録比率(0.2%)の約4倍となっている。

取引先リスク管理の観点からは、企業登記情報、年次報告書情報およびブラックリスト情報を組み合わせた継続的なモニタリングを実施することが、信用リスクの早期把握に有効な手段となる。

まとめ

中国における日系企業の休廃業は、需要構造の変化、コスト上昇、競争環境の変化、地政学リスクなど、複数の要因が重なりながら進行している。本調査では、業種・地域・企業属性ごとに休廃業の発生構造に明確な差がみられることが確認された。

業種別では、特に小売業では、多店舗展開型を前提とした事業モデルの特性上、店舗閉鎖や法人統合に伴う休廃業が多くみられる。また、自動車関連産業では、EV化への対応や市場競争の激化を背景に、生産・販売体制の見直しに伴う法人再編が進んでいる。

地域別では、上海市・広東省・江蘇省など、中国東部沿岸地域に休廃業が集中する傾向が続いている。これらの地域は日系企業の進出数自体が多く、企業再編や拠点見直しの影響も大きく表れやすい。

今後、日系企業にとっては、休廃業を単なる撤退として捉えるのではなく、事業ポートフォリオの見直しや拠点最適化の一環として理解する視点が重要となる。中国市場における競争環境や制度環境の変化を踏まえながら、柔軟な事業再編とリスク管理体制の強化を進めることが、中長期的な経営判断においてますます重要になると考えられる。

[実施概要]
・調査名称:中国における日系企業の休廃業動向(2026年調べ)
・調査方法:中国における日系企業の法人登記情報に基づく
・調査対象データ更新時期:2025年4月時点で開示されていた法人登記情報
・調査対象企業:中国全土で登記されている日本企業出資の中国企業及びその傘下企業の内、2026年2月時点で休廃業となった企業
・調査対象企業数:1,628社

※「中国日系企業データベース」とは、利墨が独自に収集した、中国全土で登記されている日本企業が出資している中国企業及びその傘下企業と日本の親会社情報を紐づけたデータベースのことを指す。
※ 調査に利用している中国法人登記情報は、2025年4月時点で開示されている情報であるため、企業の申告状況などにより最新の情報と異なる場合があります。

利墨は、中国において、日中両言語のクラウド型のグループウェアやe-learningシステム、中国企業与信管理サービスを提供し、社内情報共有、社員教育と取引先管理を支援し、日系企業を管理面でサポートしております。
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